カクレミノ

カクレミノ（隠蓑）

カクレミノ（学名：Dendropanax trifidus）は、ウコギ科カクレミノ属に属する常緑亜高木の一種です。その名の由来は、3裂した葉の形が、宝物の一つ「隠蓑」に似ていることにあります。別名として、カラミツデ、テングノウチワ、ミツデなど、地域によって様々な呼び名があります。

分布と生育環境

カクレミノは、本州の千葉県南部以西、伊豆諸島、四国、九州、沖縄といった暖地の沿岸地域に自生しています。広葉樹林の大木の下で生育することが多く、東北地方の仙台付近が植栽可能な北限とされています。

特徴

樹高は2〜3mほどで、上部に枝葉が茂り、傘を広げたような樹形をしています。葉は濃緑色で光沢のある倒卵形で、枝先に互生します。葉の長さは6〜12cm程度で、3本の葉脈が目立ちます。稚樹の頃は葉が3〜5裂に深裂しますが、成長するにつれて全縁や浅裂の葉が混在するようになります。古い葉は春から夏にかけて黄葉し、秋には落葉しますが、落ち葉はすぐに褐色になります。

花期は6〜7月で、黄緑色の小さな花が多数咲きます。果実は液果で、晩秋に黒紫色に熟します。果実には長さ4〜5cmの果柄がつきます。

利用

カクレミノは、日陰地に適した植栽樹として利用されています。鉢植えや庭木として、また神社等にもよく植えられています。

葉の形から、神に供物をするときや「豊明節会」の際に、酒や飯を盛り付ける器として用いられました。『仁徳天皇紀』にも「御綱葉」として言及されており、歴史的な背景も持ち合わせています。

古代には、樹脂が塗料として利用されていました。この塗料は「金漆」と呼ばれ、ウルシオールを主成分とする漆とは異なり、ポリアセチレンを主成分としています。光によって硬化する性質があり、漆の成分と混同されてかぶれるという説がありますが、ウルシオールが原因ではないと考えられています。

参考文献

亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年10月5日。ISBN 978-4-418-14424-2。
林弥栄『日本の樹木』（増補改訂新版）山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438。
平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、86頁。ISBN 4-522-21557-6。
山﨑誠子『植栽大図鑑［改訂版］』エクスナレッジ、2019年6月7日、40 - 41頁。ISBN 978-4-7678-2625-7。
寺田晁「古代塗料"金漆"の研究」、日本漆工、1988年、8-14頁
寺田晁「”金漆塗り”について」、日本漆工、1993年、15-21頁

関連項目

* アオキ

外部リンク

[外部リンク] (例：Wikipediaの該当ページなど)

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