カシオペア (列車)

寝台特急「カシオペア」：豪華列車の軌跡

「カシオペア」は、かつて上野駅と札幌駅を結んでいた豪華寝台特急として、多くの鉄道ファンや旅行者に愛されました。この記事では、その運行開始から終了までの歴史、使用された車両、そして現在の団体専用列車としての活躍について詳しく解説します。

「カシオペア」の誕生と運行

1999年、JR東日本は「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」といった寝台特急を超える、最高水準のサービスを提供するフラッグシップトレインとして「カシオペア」を運行開始しました。全客室を2名用A寝台個室とし、専用のE26系客車を投入するなど、その豪華さが大きな話題となりました。

人気と予約状況

全室個室という贅沢な仕様でありながら、その人気は非常に高く、寝台券は発売開始と同時に売り切れることがほとんどでした。臨時列車扱いのため、予約状況の確認はJR東日本の「えきねっと」やJR北海道の予約サイトで行う必要がありました。

運行終了と後継

2015年3月に「北斗星」が定期運行を終了し、同年8月に臨時運行も終了すると、「カシオペア」は上野駅発着の唯一の寝台特急となりました。しかし、北海道新幹線の開業に伴う架線電圧の変更により、2016年3月19日（上野発）と20日（札幌発）の運行を最後に、その歴史に幕を閉じました。

列車名の由来

「カシオペア」の名前は、北極星を中心に北斗七星と対をなす星座であるカシオペヤ座に由来しています。W型の形状がオールダブルデッカーやオール2人用個室をイメージさせることも、命名理由の一つでした。

運行の詳細

「カシオペア」は、下り列車が火・金・日曜日、上り列車が月・水・土曜日に運行される臨時列車でした。ただし、繁忙期には毎日運行されることもありました。列車番号は下りが8009、上りが8010でした。

運転速度と停車駅

最高速度は区間によって異なり、上野 - 青森間、新中小国信号場 - 木古内間では110km/h、青森 - 新中小国信号場間、木古内 - 函館間では100km/h、函館 - 札幌間では95km/hでした。
停車駅は、上野駅、大宮駅、宇都宮駅、郡山駅、福島駅、仙台駅、一ノ関駅（下りのみ）、盛岡駅（下りのみ）、函館駅、森駅、八雲駅、長万部駅、洞爺駅、伊達紋別駅、東室蘭駅、登別駅、苫小牧駅、南千歳駅、札幌駅でした。

使用車両

牽引機関車は、上野 - 青森間がEF510形500番台、青森 - 函館間がED79形電気機関車、函館 - 札幌間がDD51形ディーゼル機関車でした。客車は、JR東日本尾久車両センターに所属するE26系客車12両編成でした。

客室と設備

「カシオペア」の客室は、すべてA寝台個室であり、開放式A寝台やB寝台はありませんでした。また、ダイニングカー（食堂車）とラウンジカーが連結されていました。

客室の種類

• - カシオペアスイート（展望室タイプ）: 1号車に1室のみ存在する平屋構造の個室。展望部分にソファとテーブルを設置したリビングスペースが特徴。
• - カシオペアスイート（メゾネットタイプ）: 1・2号車にそれぞれ3室ずつ存在するメゾネットタイプの個室。1階が寝室、2階がリビングスペース。
• - カシオペアデラックス: 2号車に1室のみ存在する平屋構造の個室。
• - カシオペアコンパート: 4号車に1室のみ存在し、車椅子対応の個室。
• - カシオペアツイン（車端室タイプ）: 4 - 6号車と7 - 11号車に存在する平屋構造の個室。
• - カシオペアツイン（車端室タイプを除く）: 4 - 11号車に存在する2階建構造の個室。

客室設備

全客室にトイレ・洗面台、アメニティ、個別空調、液晶モニタなどが完備されていました。カシオペアスイートとカシオペアデラックスには、シャワーブース、ドライヤー、ミニバーなどが追加されていました。

ダイニングカーとラウンジカー

3号車のダイニングカーでは、フランス料理や和食のコース料理、軽食などが提供されました。12号車のラウンジカーは、乗客が自由に利用できる休憩スペースでした。

団体専用列車「カシオペアクルーズ」「カシオペア紀行」

一般販売の「カシオペア」が運行終了した後、E26系客車は団体専用列車として活用されることになりました。

「カシオペアクルーズ」

「カシオペアクルーズ」は、JR東日本とびゅうトラベルサービスが企画する周遊タイプのツアーです。主に本州と北海道の観光地を巡る3泊4日の行程で運行されます。E26系客車はそのままに、ツアー専用の豪華な食事やサービスが提供されます。

「カシオペア紀行」

「カシオペア紀行」は、一般販売時代と同じルートの上野 - 札幌間を夜行で結ぶツアーです。往路または復路の片道利用、または片道乗車ツアーが設定されています。一般販売時と同様のルートで運行され、寝台特急の旅を再び体験できます。

運行ルート

「カシオペアクルーズ」では、上野駅を発着し、東北本線や日本海ルートを経由して北海道へ向かうルートが一般的です。「カシオペア紀行」では、主に上野 - 札幌間の往復運行のほか、上野 - 盛岡間、上野 - 青森間、上野 - 長野間などの運行も設定されています。

使用機関車

「カシオペアクルーズ」「カシオペア紀行」の牽引には、EF81形電気機関車、EH800形電気機関車、DF200形ディーゼル機関車などが使用されます。JR貨物から機関車を借り受けている場合もあります。

「カシオペア」の遺産

寝台特急「カシオペア」は、その豪華さと快適さで多くの人々に愛されました。運行終了後も、E26系客車は団体専用列車として活用され、その魅力を伝えています。かつての豪華な寝台列車の旅を、現代に蘇らせた「カシオペア」は、鉄道史に残る名列車と言えるでしょう。

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