カスピアン王子のつのぶえ

『カスピアン王子のつのぶえ』は、C・S・ルイスが執筆した人気児童文学シリーズ『ナルニア国物語』を構成する7作品の一つです。シリーズの中では執筆・出版順で2番目にあたりますが、ナルニアにおける時系列では4番目の物語となり、『馬と少年』の物語の後、およそ1300年の歳月が経過した世界を描いています。日本語版は岩波書店から出版されている瀬田貞二氏による翻訳が広く知られています。

物語の舞台となるナルニア国は、今やテルマール人と呼ばれる人々が支配する世界へと様変わりしていました。古くからナルニアに暮らしてきた小人や動物たちは、迫害を逃れて森深く身を潜め、静かに暮らしています。そんな中、カスピアン王子は、邪悪な叔父であるミラース王の陰謀によって命を狙われ、森へと逃亡します。 ミラース王はカスピアン王子の父王を暗殺し、王位を乗っ取った張本人です。王位継承権を有するカスピアン王子は、ミラース王にとって邪魔な存在であり、その命を狙うのです。

絶体絶命の危機に瀕したカスピアン王子は、最後の手段として魔法の角笛を吹き鳴らします。この角笛は、かつてペベンシー家の兄妹がナルニアに置いていったもので、どんな状況にあっても吹き鳴らせば、必ず助けが来ると信じられていたのです。

王子が角笛を吹き鳴らした時、イギリスの田舎の駅にいたペベンシー家の兄妹―ピーター、スーザン、ルーシー、エドマンド―は、不思議な力に導かれるようにして、再びナルニアへと召喚されます。彼らは、すでに1000年以上もの歳月が流れ、かつて栄華を誇ったナルニアの首都ケア・パラベルも廃墟と化しているのを目の当たりにします。魔法や妖精たちが忌み嫌われ、人間が支配する世界になっていたのです。

ナルニアに現れたペベンシー兄妹は、カスピアン王子に仕える小人のトランプキンと出会います。トランプキンの案内でカスピアン王子にたどり着いた彼らは、ナルニアの住人たちをまとめて、テルマール人と戦うことを決意します。しかし、ナルニアの人々は小人や動物など、テルマール人である人間と比べて戦闘能力が劣っており、戦いは苦戦を強いられます。

窮地に陥ったペベンシー兄妹は、テルマール人の王であるミラース王と、ピーターが直接対決することを選択します。一騎討ちによって、ナルニアの未来が左右されることとなります。この一騎討ちを通して、ペベンシー兄妹の勇気と、カスピアン王子の運命、そしてナルニア国の未来が大きく動いていきます。

物語のクライマックスでは、アスラン、ナルニアの創造主にして「大帝の息子」が介入し、カスピアン王子を助けます。アスランの力によって、カスピアン王子は王位を奪還し、ナルニア国は平和を取り戻すのです。この物語は、カスピアン王子の成長、ペベンシー兄妹の再会と活躍、そして善と悪の戦いを通して、勇気、友情、そして希望といった大切なテーマを描いています。

カスピアン王子は、この物語だけでなく、『朝びらき丸 東の海へ』でも主要な登場人物として活躍し、『銀のいす』や『さいごの戦い』にもわずかながら登場します。彼の物語は、『ナルニア国物語』全体の重要な部分を担っていると言えるでしょう。それぞれの作品を通じて、カスピアン王子の成長と、ナルニア国の歴史が刻まれていきます。

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