カミラ・メサ

カミラ・メサは、1985年 7月22日にチリのサンティアゴで生まれた、ジャズの分野を中心に活動するギタリスト、歌手、作曲家です。現在、活動の拠点をアメリカ合衆国ニューヨークに置いています。彼女は、母国チリにおいてジャズシーンにおける重要なアーティストの一人として認識されています。リーダープロジェクトとしては、自身のソロ名義での活動に加え、弦楽器を取り入れた室内楽的な編成の「ザ・ネクター・オーケストラ」を率いて精力的に活動しています。

音楽的背景とキャリアの始まり

ジャーナリストでありながら音楽愛好家でもあった父親の影響で、クラシック音楽やビートルズなどのポピュラー音楽に触れて育ちました。また、ドラマーの兄弟からはジャズやフュージョンの世界を知らされました。高校時代にギターを手にした彼女は、当初、ジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリンといった1970年代のロックミュージックから強い影響を受けました。高校卒業後、サンティアゴの「Projazz Institute」に進学し、ポピュラー音楽とジャズの専門教育を受けます。在学中から演奏活動を開始し、ギタリストとしてだけでなく、次第にボーカリストとしても才能を開花させていきました。

22歳になった2007年には、ジャズ・スタンダード集となる国内デビューアルバム『Skylark』をリリース。これを皮切りに、チリ国内でのツアーやテレビ出演などを重ねてキャリアを築きました。2009年に発表したセカンドアルバム『Retrato』では、ビョーク、ジョニ・ミッチェル、レッド・ツェッペリンといった欧米のアーティストに加え、母国チリの国民的シンガーソングライター、ビクトル・ハラや、ブラジルのイバン・リンスといった南米の著名なミュージシャンの楽曲をカバーし、自身のルーツや多様な音楽的関心を示しました。

ニューヨークへの進出と国際的な活動

チリで一定の評価とキャリアを確立した後、23歳で渡米し、ニューヨークのニュースクール大学でジャズを専攻しました。これを機に活動拠点をニューヨークに移し、アメリカ国内でのキャリアをスタートさせます。ジャズ・スタンダード、ヴィレッジ・ヴァンガード、ブルーノート・ジャズ・クラブといったニューヨークの著名なジャズクラブをはじめ、様々な場所で公演を重ね、経験を積みました。同時に、ポーランド、イタリア、ドイツ、フランスなど、ヨーロッパ各地で開催される音楽祭にも出演し、活動の場を国際的に広げました。

2012年にニュースクール大学を卒業後、ピアニストのアーロン・ゴールドバーグをパートナーに迎え、アメリカでの初作品となるミニアルバム『Prisma』（2013年リリース、2011年録音）を発表しました。

2016年にはサニーサイド・レコードと契約し、フルアルバム『トレイセス（Traces）』をリリース。このアルバムでは、自身のオリジナル曲のほか、スティーヴン・ソンドハイムのミュージカルナンバーをカバー・編曲するなど、ジャズという枠にとらわれない多様な選曲とアプローチを見せました。

ザ・ネクター・オーケストラと近年の活動

通常のジャズコンボ編成に加え、カミラ・メサは「ザ・ネクター・オーケストラ」という実験的なプロジェクトも率いています。このユニットは、彼女のボーカルとギターを中心に、ピアノ、ベース、ドラム・パーカッションに加え、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロといった弦楽器を取り入れた室内楽的な編成が特徴です。ここでは、ジャズ、ポピュラー音楽、クラシック音楽の境界を横断するような独創的な音楽表現を追求しています。注目すべきは、スナーキー・パピーでも活躍するパーカッショニストの小川慶太、そしてヴァイオリン奏者の大村朋子といった、ニューヨークを拠点とする日本人ミュージシャンが主要メンバーとして参加している点です。

2018年10月には、ソニー・ミュージックのクラシック・クロスオーバー系レーベル、マスターワークスとの契約を発表。そして2019年5月、カミラ・メサ & ザ・ネクター・オーケストラ名義での最新フルアルバム『アンバー（Ambar）』を同レーベルからリリースしました。このアルバム（2017年録音）は、スペイン語のタイトルを持ち、彼女のルーツと現在の音楽性を融合させた意欲作となっています。

受賞と来日公演

カミラ・メサは、その活動が高く評価されており、母国チリの音楽賞「Premios Pulsar」のジャズ・フュージョン部門最優秀アーティスト賞（2020年）を受賞しています。また、「Independent Music Awards」でも複数回受賞（2016年2部門、2018年1部門）するなど、国際的な評価も確立しています。

日本へも複数回来日しています。2016年にはピアニストのシャイ・マエストロとのデュオで、東京、静岡、愛知、京都の各都市を巡るツアーを行いました。2017年にはライアン・ケバリー & カタルシスの一員として、また東京JAZZフェスティバルではシャイ・マエストロ・トリオにフィーチャリングされる形で来日。2019年には京都音楽博覧会にシャイ・マエストロとのデュオで出演し、ブルーノート東京ではザ・ネクター・オーケストラを率いて来日公演を実現させています。これらの公演を通じて、日本のジャズファンにもその存在を知られるようになりました。

使用機材としては、サドウスキー SS-15やギブソン ES-175といったジャズギターに、フェンダー・ツインリヴァーブのアンプを組み合わせて使用しています。

カミラ・メサは、伝統的なジャズの素養を持ちながらも、出身地の文化的背景、ロックや南米音楽、クラシック音楽など多様な要素を柔軟に取り入れ、常に新しい音楽表現を探求し続ける、現代ジャズシーンにおいて注目すべきアーティストです。

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