カム・ポージー

カム・ポージー：ニグロリーグの伝説

カム・ポージー（Cumberland Willis "Cum" Posey, 1890年6月20日 - 1946年3月28日）は、アメリカのニグロリーグにおいて、選手そして傑出した球団経営者として名を馳せました。右投げ右打ちの野球選手として活躍し、その後、ホームステッド・グレイズをニグロリーグの強豪へと育て上げたことで、その名を歴史に刻んでいます。

生い立ちと初期のキャリア

ペンシルベニア州ホームステッドで生まれたポージーは、幼い頃からスポーツに親しんで育ちました。父はオハイオ川の渡し舟のエンジニアからデルタコール社のゼネラルマネージャーへと転身し、母はオハイオ州立大学で初めてアフリカ系アメリカ人として卒業後、教職に就くという恵まれた環境でした。ホームステッド高校時代からスポーツマンとして知られ、ペンシルベニア州立大学やピッツバーグ大学にも在籍していました。

1910年、ポージーの故郷であるホームステッドで、鉄鋼労働者を中心としたセミプロ野球チーム「グレイズ」が結成されます。ポージーは1911年から外野手としてこのチームに加わり、その才能を発揮。グレイズは徐々に実力をつけ、多くの対戦オファーを受けるようになります。1912年からはマネージャーも兼任し、球団運営にも深く関わるようになりました。

球団経営者としての手腕

ニグロリーグが確立される以前の1910年代、ポージーの経営手腕により、ホームステッド・グレイズは多くの才能が集まる人気球団へと成長を遂げます。監督業も兼務していたポージーは、クラブハウス内の賭け事を禁止するなど、選手たちを厳格な規則の下で管理していました。

1920年代に入ると、近隣のニグロリーグ球団ピッツバーグ・キーストーンズからの選手引き抜きなど、運営面での攻勢に苦しめられます。財政基盤の強化が必要と考えたポージーは、1922年にチャーリー・ウォーカーを経営に参画させ、メジャーリーグ、ピッツバーグ・パイレーツの本拠地であるフォーブス・フィールドの使用許可を取り付けます。1923年のイースタン・カラード・リーグ創設とともにチームの強化にも着手し、グレイズは1923年から1926年までの4年間で140勝13敗という驚異的な戦績を残し、メジャーリーグ球団との交流試合でも互角以上に戦えるほどの力をつけました。

1929年にニグロ・アメリカン・リーグに加盟しますが、リーグは1年で解体。1930年には再び独立系チームとして活動することになります。この時期のグレイズには、オスカー・チャールストン、ジョシュ・ギブソン、ジュディ・ジョンソンといったスター選手が多数在籍し、163勝23敗という圧倒的な成績を誇りました。

苦難と再建、そして栄光

1931年をピークに、世界恐慌の影響などから経営は悪化し、スター選手が次々とチームを去ります。財政難に直面したポージーは、ルーファス・ジャクソンを共同経営者に迎え資金調達を図ります。1930年代の球団運営は、実質的に資金供給者であるジャクソンが主導しました。ジャクソンの資金援助により、ポージーは1937年にバック・レナードとジョシュ・ギブソンをチームに呼び戻し、グレイズはニグロ・ナショナル・リーグで9連覇という偉業を達成します。1940年にはグリフィス・スタジアムの使用許可も得て、フォーブス・フィールドとの間でホームゲームを分散して開催し、1試合あたり約3万人の観客を集めるほどの人気を博しました。

1940年代に入ってもグレイズの強さは衰えませんでしたが、ポージー自身は病に侵されていきます。1年以上の闘病生活の後、1946年に肺がんで死去。その功績が認められ、2006年にニグロリーグ特別委員会によりアメリカ野球殿堂入りを果たしました。

バスケットボールとの関わり

ポージーは野球だけでなく、バスケットボールにも情熱を注いでいました。1925年までプロバスケットボールチーム「モンティセロ・デラニーズ」に所属し、その後、自身でバスケットボールチーム「グレイズ」を組織。このチームは、当時強豪だったニューヨーク・セルティックスを破るほどの力をつけたといわれています。

カム・ポージーは、ニグロリーグの発展に大きく貢献しただけでなく、アフリカ系アメリカ人スポーツの歴史においても重要な人物として、その名を永遠に刻んでいます。

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