カラカル

カラカル（Caracal caracal）

カラカルは、食肉目ネコ科カラカル属に分類される中型の食肉類です。その名の由来はトルコ語で「黒い耳」を意味する「karakulak」から来ており、特徴的な外見を持つ動物です。

分布

カラカルは、アフリカ大陸および中東、中央アジア、インドにかけて広く分布しています。具体的には、アフガニスタン、エジプト、インド、イラン、トルコ、南アフリカ共和国など、非常に広範囲に生息しています。多様な環境に適応しており、サバンナ、草原、半砂漠、低木林、丘陵地、森林など、様々な場所に生息しています。

形態

カラカルは、体長61 - 106センチメートル、尾長18 - 34センチメートル、肩高38 - 50センチメートルほどで、体重はオスで8 - 20キログラム、メスで6.2 - 15.9キログラムです。オスはメスよりもやや大きいです。体毛は短く、地色は赤褐色または黄灰色で、顎、胸、腹にかけて白色です。稀に黒化した個体も存在します。

最も特徴的なのは、その大きな耳です。耳介の背面は黒く、先端には4.5センチメートルの長く黒い房毛があります。この房毛の役割は完全には解明されていませんが、コミュニケーションに用いられると考えられています。また、目から鼻にかけて黒い筋模様が入るのも特徴的です。

四肢は長く、特に後肢が発達しており、これにより非常に高くジャンプすることができます。尾は比較的短いです。

分類

カラカルの分類については、いくつかの説があります。以前はオオヤマネコ属やネコ属に分類されることもありましたが、近年の分子系統解析の結果、アフリカゴールデンキャットと単系統群を形成し、カラカル属に分類されることが一般的です。

亜種に関しても、8亜種に分ける説と3亜種に分ける説があります。以下に、それぞれの説における分類と分布を示します。

8亜種説

Caracal caracal caracal：アフリカ大陸南部
Caracal caracal algira：アフリカ大陸北部
Caracal caracal damarensis：アフリカ大陸南部
Caracal caracal limpopoensis：アフリカ大陸南東部
Caracal caracal lucani：ガボン、アンゴラ北部、コンゴ民主共和国南西部、西部
Caracal caracal nubicus：エジプトからタンザニア北部
Caracal caracal poecilotis：モーリタニア南部、ニジェール北部、セネガル北部からスーダン国境西部
Caracal caracal schmitzi：中東、アラビア半島からトルクメニスタン、インド

3亜種説

Caracal caracal caracal：アフリカ大陸南部、東部
Caracal caracal nubicus：アフリカ大陸北部、西部
Caracal caracal schmitzi*：中東からインド

生態

カラカルは、乾燥した地域を好みますが、砂漠には生息しません。標高2,500メートルまでのエチオピア高原でも見られることがあります。地上での生活が中心ですが、木登りも得意です。

夜行性ですが、昼間に活動することもあります。繁殖期を除いて単独で生活し、縄張りを持ち、尿によるマーキングを行います。オスの行動圏はメスの行動圏よりも広い傾向があります。

食性は動物食で、鳥類、小型レイヨウ、齧歯類、ノウサギ、ハイラックス、爬虫類などを食べます。時にはヒツジやヤギなどの家畜を襲うこともあります。非常に優れた視覚と聴覚を持ち、3メートルもジャンプして空中の鳥を捕らえることができます。また、自身の体重の2 - 3倍の獲物を倒すことも可能です。獲物を捕らえる際は、忍び寄ってから素早く飛びかかります。

人間との関係

カラカルは、かつてイランやインドで鳥類の狩猟に利用されていました。しかし、現在では生息地の破壊や家畜への被害などにより、個体数が減少している地域もあります。アフリカ中部、西部、北部、北東部、およびアジアでは、生息地の破壊が主な脅威となっています。また、家畜を襲うことから、駆除の対象となることもあります。

一部の国では狩猟が禁止されていますが、ナミビアや南アフリカでは、家畜を襲う「問題のある動物」として無制限に殺すことが許可されている地域もあります。

日本では、神戸市立王子動物園が初めて飼育下繁殖に成功しました。また、特定動物に指定されているため、飼育には都道府県知事または政令市の長の許可が必要です。

2010年世界室内陸上競技選手権大会（カタール・ドーハ）では、カラカルを擬人化したSahamがマスコットとして採用されました。

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