カラスザメ

カラスザメ（Etmopterus pusillus）

カラスザメはカラスザメ科に属する海洋生物で、主に太平洋と大西洋に生息しています。このサメは、日中は深い海に潜み、夜間に浅い海へと移動する日周鉛直移動を行います。最大で約50センチメートルに成長し、体は細長く暗褐色で、体側には黒い模様が見られます。カラスザメは卵胎生であり、成長速度は遅い一方、食性は小型のイカや魚類、さらには魚卵を主に摂取します。また、国際自然保護連合（IUCN）の評価では、その保全状況は「軽度懸念」とされています。

分類

1839年、イギリスの生物学者リチャード・トーマス・ロウによって、最初に「Acanthidium pusillum」として学術的に記載されました。その後、本種は現在のカラスザメ属に移され、種小名の「pusillus」はラテン語で「弱い」という意味であることが示されています。さらに、リュウキュウカラスザメと共に、特有の形状をした皮歯を持った種群を形成しています。

分布

カラスザメは、メキシコ湾やアルゼンチンから始まり、ポルトガル、カーボベルデ、アソーレス諸島、さらには南アフリカに至る大西洋地域で広く分布しています。また、インド洋のクワズール・ナタール州沖やマダガスカル、太平洋の東シナ海、南日本、オーストラリア沖、さらにはニュージーランド近辺でも確認されています。主に深度274メートルから1,000メートルの範囲の海底に生息し、最深で1,998メートル程度まで潜ることもできるようです。

形態

カラスザメの体は華奢で、特に頭部が大きく特徴的です。眼は大きな楕円形で、鼻孔には短い前鼻弁があります。上顎には22から31本、下顎には30から53本の歯が並んでおり、上顎の歯は細く滑らかな尖頭を持っています。胸鰭は丸みを帯び、第一背鰭には頑丈な棘があり、第二背鰭は第一よりも大きいです。体色は均一な暗褐色ですが、体側には独特の黒い模様が見受けられます。

生態

食事は、イカや小型のツノザメ、魚卵などを主成分としています。卵胎生で、胚は卵黄から栄養を得て育ち、一度の出産でおおよそ10匹の稚魚を産むことが確認されています。性成熟には個体差があり、雄は31センチメートルから39センチメートル、雌は38センチメートルから47センチメートルで達成します。成長は遅く、ポルトガル南方沖で13年以上生きる個体も報告されています。

人との関連

カラスザメは、東部大西洋や日本周辺で稚魚が漁業によって混獲されることが多く、ポルトガル南方沖では発展した深海漁業の中で重要な役割を果たしています。通常、大部分の個体は廃棄されますが、一部は干物や魚粉として利用されています。低い繁殖力と遅い成長速度により、持続的な漁業圧には耐えられないとされています。ただし、現時点ではそのような状況を確認する証拠は見つかっておらず、分布域が広いことから、IUCNによる評価は「軽度懸念」とされています。水族館においては、短期間の飼育記録はあるものの、長期飼育の成功事例はありません。

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