カラダン川

カラダン川は、インド北東部のミゾラム州東部と、ミャンマー西部に位置するチン州およびラカイン州を流れる重要な国際河川です。

現地ではクラーダンミッ（Kəládàɴ mjɪʔ）と呼ばれ、またキサプナディ、ベイノ川、バウィヌ川、コロディネ川といった複数の別名でも知られています。特にインド側ではチムトゥイプイ川の名で親しまれています。この川は、広大なベンガル湾への出口を持つことから、古くからこの地域の交通や交易において重要な役割を果たしてきました。

地理

川の源流はミャンマーのチン州中央部、地理座標約北緯22度49分28秒、東経93度31分57秒に位置します。最上流部ではティミット川（Timit）と呼ばれ、南へと流れます。まもなくチャル川（Chal）と合流すると、以降はボイヌ川（Boinu）として知られるようになります。ボイヌ川はさらに南へ流れ下り、地理座標約北緯22度08分40秒、東経93度34分30秒付近でトウェ川（Twe）との合流を経て、流れの向きを大きく西へと変えます。西進を続けた川は、地理座標約北緯22度05分20秒、東経93度14分12秒付近に至ると、今度は北西へと向きを変えます。地理座標約北緯22度11分06秒、東経93度09分29秒付近、パビパ山（Mount Phabipa）の麓で流れは北向きに転じ、この地点から地理座標約北緯22度47分09秒、東経93度05分47秒付近にあるティオ川（Tio）との合流点までの区間が、インドとミャンマーの国境線となっています。この国境区間では、川はまだボイヌ川として知られます。国境線がティオ川に沿って北上する一方で、ボイヌ川はこの地点から北西へと流れを変え、インドのミゾラム州へと入ります。ミゾラム州に入った川は、カラダン川と名称を変えるのです。

カラダン川はミゾラム州の南東部を流れ、地理座標約北緯22度58分21秒、東経92度58分55秒付近で最も北寄りの地点に達します。その後、南西へと向きを変え、右岸側からトゥイチョン川（Tuichong）が合流すると再び南流を始めます。さらに南下し、地理座標約北緯22度43分39秒、東経92度54分46秒付近で右岸側からマット川（Mat）が合流します。その後も南流を続け、右岸側からカウルティンデン川（Kawrthingdeng）が加わります。川はケンカール（Khenkhar）の北西、地理座標約北緯22度03分40秒、東経92度51分05秒付近に位置するライタウの渡し（Raithaw Ferry）で再びミャンマーのチン州へと戻ります。ミャンマー国内を南流し、地理座標約北緯21度06分56秒、東経92度57分42秒付近で左岸側からミ川（Mi）が合流します。ンガメ付近から、川はミャンマーのラカイン州に入り、そのままの向きで南へと流れ、最終的に港湾都市シットウェ（Sittwe）で広大なベンガル湾へと注ぎ込みます。カラダン川は、流量や流域面積において、ミゾラム州最大の河川です。

歴史

歴史的に見ても、カラダン川は重要な水路として利用されてきました。例えば、20世紀初頭の1904年には、ベンガル湾に面したシットウェ港から、当時イギリス領インド帝国の一部であった現在のミゾラム州へ至る主要な交通路として機能していたことが記録されています。

カラダン川複合輸送計画

近年、この国際河川は、インド政府が推進する「カラダン川複合輸送計画」（Kaladan Multi-Modal Transit Transport Project）の要となっています。この計画は、インド本土（特にコルカタ港）とインド北東部（ミゾラム州）間の物流効率を抜本的に改善することを目的としています。具体的には、コルカタからシットウェまでを海路、シットウェからミャンマー国内のチン州パレッワ（Paletwa）までをカラダン川を利用した水路、そしてパレッワからミゾラム州までは新たに建設される陸路（高速道路）で結ぶという複合的な輸送ルートを構築するものです。

しかしながら、ミャンマー国内、特にカラダン川沿岸地域における国軍と反政府勢力アラカン軍（Arakan Army）間の武力衝突が激化しており、インフラ建設工事関係者の安全確保が困難な状況が続いています。このため、計画の進捗は当初の予定から著しく遅延しています。

まとめ

カラダン川は、インドとミャンマーにまたがる重要な河川であり、多様な名称を持ち、その流路は複雑に変遷します。古くから交通の要として機能し、現在は両国間の経済的な結びつきを強化するための大規模な複合輸送計画の中心となっています。しかし、地域の不安定な情勢がその実現を阻んでいる現状があります。

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