カラチャイ人

カラチャイ人：北コーカサスのテュルク系民族

概要

カラチャイ人は、北コーカサス地方に居住するテュルク系民族です。モンゴロイドとコーカソイドの両方の特徴を持つとされ、独自の言語と文化を保持しています。彼らの歴史は、幾多の困難と変遷を経て現在に至ります。本稿では、カラチャイ人の歴史、地理、言語、宗教、文化、そしてディアスポラについて詳細に解説します。

歴史

カラチャイ人はキプチャク系テュルク民族の子孫であり、ダゲスタン共和国のクムイク人と言語を共有する部分があります。彼らの名称はトルコ語で「黒い川」を意味します。11世紀にキプチャクがコーカサス地方に進出した後、カラチャイ人は中央コーカサス地方の山岳地帯を中心に定住しました。中世にはアラニア王国の一部として繁栄しましたが、14世紀にはティムール朝の侵略を受け、大きな被害を受けました。この侵略の後、イスラム教に改宗した集団も多く見られます。

19世紀初頭にはロシア帝国の支配下に入り、当初は独自の統治機構を維持していましたが、その後、ロシア帝国、ソ連と幾度となく衝突を繰り返しました。特に、1831年から1860年にかけては、コーカサスにおける反ロシア運動に参加。1861年から1880年にかけてはロシア軍の弾圧を逃れるために多くの人々がオスマン帝国へ亡命しました。第二次世界大戦中、ナチスドイツと協力したとしてソ連政府から非難を受け、1944年にはカザフスタン、キルギス、ウズベキスタンへと強制移住させられました。この強制移住によって、多くのカラチャイ人が飢餓や疫病により命を落としました。スターリン死後のフルシチョフ政権下で、一部の人々は故郷へ帰還を許されました。

地理

カラチャイ人は、バルカル人、ノガイ族と共に、クバン川、マルカ川、バクサン川、チェレク川などの流域を中心に中央コーカサス地方の谷や丘陵地帯に居住しています。エルブルス山脈、ヨーロッパ最高峰の山々は、彼らの文化と生活に大きな影響を与えてきました。

言語と宗教

カラチャイ人は、テュルク諸語北西方言に属するカラチャイ・バルカル語を話します。これは、ダゲスタンのクムイク人が話すクムク語と近縁です。宗教はイスラム教が中心となっています。

ディアスポラ

19世紀以降、多くのカラチャイ人がトルコへ移住しました。1944年の強制移住によって、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンなどの中央アジア諸国にも大きなディアスポラが形成されました。ソ連崩壊後、多くの人々が故郷へ帰還しましたが、現在でもトルコ、ウズベキスタン、アメリカ合衆国、ドイツなどにカラチャイ人のコミュニティが存在しています。

文化

カラチャイ人の文化は、長年にわたる山岳地帯での生活と独自の氏族制度（ツクム）によって形成されてきました。ツクムは血縁関係に基づいた氏族であり、カラチャイ社会の重要な構成要素となっています。彼らは独立心と伝統への強いこだわりを持ち、家族や氏族への忠誠心は非常に高いです。また、臆病さを恥とする文化も特徴的です。

まとめ

カラチャイ人の歴史と文化は、困難と変遷に満ちたものでしたが、彼らは独自のアイデンティティを維持し、現在も世界各地で独自の文化と伝統を継承しています。彼らの歴史と文化に対する理解を深めることは、多様な文化を持つ世界を理解する上で非常に重要です。

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