カラフトイチヤクソウ

カラフトイチヤクソウについて

カラフトイチヤクソウ（樺太一薬草、学名：Pyrola faurieana）は、ツツジ科に分類される常緑の多年草です。旧来の分類においてはイチヤクソウ科に属していましたが、最近のAPG植物分類体系ではこの科全体がツツジ科イチヤクソウ亜科に移行しています。植物学におけるこの変化は、分類の精度向上を目的としています。

特徴

カラフトイチヤクソウは、地下に細長い根茎を伸ばし、葉が根元に生えます。その葉柄は狭く、長さは約1.5～3.5cm。葉身は広楕円形で、2.5～4cmの長さと2～3cmの幅を持ち、先端は円形またはややとがった鈍形をしています。葉の縁には小さな鋸歯が見られ、全体的に厚い質感を持っています。

この植物の花期は7月から8月にかけてで、葉の間から10～20cmの高さの花茎を伸ばし、総状花序を形成し、下向きに花をつけます。総数は10～20個と多く、花茎には1～2枚の小さな披針形の鱗片葉があります。

花の萼片は基部が合着しており、5つに裂け、裂片は卵形または三角状卵形で、先端は鋭くなっています。花冠はやや赤みがかった白色で、直径は8～9mm。花弁は5枚あり、あまり開かないことが特徴です。雄蕊は10本あり、長さ約2mmの葯が花柱を取り囲む形になっており、花柱は真っ直ぐに伸び、果実が成熟すると長さが3～5mmになります。果実は径6～7mmの蒴果として形成されます。

分布と生育環境

カラフトイチヤクソウは、日本国内では主に北海道や本州の東北地方に見られます。特に亜高山帯や高山帯の場所で、ガンコウランのような常緑小低木がマット状で形成されているエリアや、草地、砂礫地などで頻繁に見られます。国外では、千島列島、サハリン、カムチャツカ半島などにも自生しています。

名前の由来

この植物の学名である「faurieana」は、フランスの宣教師であり植物採集家であるフォーリー神父にちなんで名付けられました。また、この種の標本は樺太で採集されたことが記録されています。

保全状況評価

カラフトイチヤクソウは絶滅危惧II類（VU）に分類されており、環境省のレッドリストに載っています。この評価は、2017年に環境省によって行われたもので、以前の2000年版レッドデータブックでは絶滅危惧IB類（EN）として分類されていました。

結論

カラフトイチヤクソウは、そのユニークな葉と花の形状から観察者を惹きつける植物であり、日本の高山帯の豊かな生態系の一部を形成しています。保護活動を通じて、次世代にもその美しさを伝えていくことが重要です。

もう一度検索