カリガネ

カリガネ（雁金）

カリガネ（学名: Anser erythropus）は、カモ目カモ科マガン属に属する鳥類です。その美しい姿と、長距離を移動する生態で知られています。

分布

カリガネは、広範囲な地域に分布しています。繁殖地は、ロシアの北極圏やスカンジナビア半島などの寒冷な地域です。冬季になると、温暖な地域へ南下し越冬します。越冬地としては、インド、中華人民共和国、日本、ハンガリー、カスピ海南岸部、黒海沿岸域などが挙げられます。

カリガネには、大きく分けて2つの個体群が存在します。一つは、スカンジナビア半島からヨーロッパロシアで繁殖し、ヨーロッパ南部から中央アジアにかけての地域で越冬する個体群です。もう一つは、ロシアで繁殖し、中華人民共和国、日本、朝鮮半島で越冬する個体群です。

日本では、冬季に島根県の宍道湖や宮城県の伊豆沼・長沼などで越冬する姿が観察されています。また、秋の渡りの時期には、北海道のサロベツ原野などに立ち寄ることもあります。

形態

カリガネは、全長53 - 66cm、翼長36 - 39cm、翼開長128cm、体重1.4 - 2.5kgほどの大きさです。全身は暗褐色で、額から頭頂にかけて白いのが特徴です。腹部には不規則な黒い横縞が入ります。尾羽の付け根部分を覆う羽毛（上尾筒、下尾筒）は白色です。翼は長く、その先端が尾羽よりも後方に突出しています。

目の周りの皮膚（眼瞼）は黄色で、嘴は短くピンク色をしています。脚の色は橙色です。

生態

カリガネは、湿地や農耕地、牧草地などに生息しています。和名の「カリ」は、その鳴き声に由来すると言われています。かつては、マガン属の鳥類全般を指す言葉として使われていました。

食性は植物食で、草（スゲなど）や木の葉などを食べます。

繁殖は卵生です。主にツンドラ地帯と森林ツンドラの境界付近で繁殖します。5 - 6月頃に、3 - 8個（平均5個）の卵を産みます。抱卵期間は25 - 28日間で、雛は約35日で飛べるようになります。

人間との関係

カリガネは、生息地の破壊や狩猟などにより、生息数が減少しています。そのため、保護対策が進められています。1981年には、スウェーデンとオランダの間で、カオジロガンを仮親として渡りを復活させる試みが行われ、成果を上げています。

ハンガリーでは、1950年代以前には120,000羽以上の越冬個体数が確認されていましたが、1980年代には数千羽にまで減少したと推定されています。中国の洞庭湖では、1996年に566羽の越冬個体が観察されています。

日本における状況

日本では、江戸時代にはカリガネが飛来していたという記録がありますが、マガンと混同されることが多く、詳しい状況は分かっていませんでした。しかし、日本雁を保護する会の調査により、1999年以降は最大100羽程度がサロベツ原野などに渡りの途中で飛来し、宮城県北部の伊豆沼などで越冬することが判明しています。宍道湖でも約25羽が越冬しています。1999 - 2007年にかけて、飛来数は徐々に増加する傾向にあります。

カリガネは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類 (EN)に指定されています。

日本では、1978年に多摩動物公園が人工照明で白夜を再現することで、飼育下繁殖に成功しています。

また、カリガネを意匠化した雁金紋は、家紋として使用されています。

関連項目

マガン属
鳥類レッドリスト (環境省)

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