カルミニャーノ (ワイン)

カルミニャーノ：トスカーナの伝統と革新が息づくワイン

カルミニャーノは、イタリア・トスカーナ州のフィレンツェ北西に位置するワイン生産地域です。中世の時代からその品質の高さで知られ、トスカーナ大公コジモ3世・デ・メディチによって特別な法的保護を与えられました。特筆すべきは、サンジョヴェーゼにカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドする伝統で、これは近年人気を博している「スーパータスカン」よりもはるかに長い歴史を持っています。

古代ローマ時代からのワイン造りの歴史

カルミニャーノでのワイン造りの歴史は古代ローマ時代にまで遡ります。中世にはその品質の高さが広く知られるようになり、地域の支配者であったメディチ家はそれを誇りとしていました。16世紀には、フランス王妃カテリーナ・デ・メディチの要望によりカベルネ・ソーヴィニヨンが持ち込まれ、ブレンドに用いられるようになったと伝えられています。この品種は、今でも地元で「ウーヴァ・フランチェスカ（フランスのブドウ）」と呼ばれ、その名残をとどめています。

1716年、トスカーナ大公コジモ3世は、カルミニャーノを含むトスカーナの優れたワイン生産地域を定め、その名称の使用を法的に保護しました。イギリスのアン女王がカルミニャーノのワインを愛飲したことも、その名声を高める一因となりました。18世紀から19世紀にかけても、植物学者や農学者によってその品質が賞賛されています。

キャンティとの違い、独自のD.O.C.G.規格

1932年、カルミニャーノはキャンティ・モンタルバーノ地区に組み込まれましたが、サンジョヴェーゼとカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドする独自の製法は、キャンティとは一線を画していました。1975年には、ブレンドにカベルネ・ソーヴィニヨンを使用することが公式に認められた初のD.O.C.となり、1990年にはD.O.C.G.に昇格しました。

カルミニャーノ D.O.C.G.の規定では、サンジョヴェーゼが50%以上、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランが合わせて10%～20%使用されることが義務付けられています。ロッソの場合、約1年半の熟成期間が必要で、そのうち8ヶ月はオークまたはクリの木樽で熟成させなければなりません。リゼルヴァの場合は、約3年の熟成期間と12ヶ月以上の木樽熟成が求められます。

バルコ・レアーレとヴィン・サント

カルミニャーノには、DOCGの他に、比較的若飲み向けの「バルコ・レアーレ・ディ・カルミニャーノDOC」や、デザートワインである「ヴィン・サント・ディ・カルミニャーノDOC」があります。

バルコ・レアーレは、ロッソとロザートの2種類があり、ブドウ品種の規定はカルミニャーノDOCGと同じですが、熟成に関する規定が異なります。ロザートは、地元で「ヴィン・ルスポ」と呼ばれ、独特の製法で作られています。

ヴィン・サントは、通常のタイプとロゼタイプの「オッキオ・ディ・ペルニーチェ」があり、それぞれリゼルヴァも存在します。通常のタイプは、トレッビアーノやマルヴァジーアを主体とし、オッキオ・ディ・ペルニーチェはサンジョヴェーゼを主体としています。どちらのタイプも、長期間の木樽熟成を経て出荷されます。

カルミニャーノのテロワール

カルミニャーノの栽培地域は、フィレンツェ北西の標高50～200メートルの低い丘陵地に位置しています。この標高はサンジョヴェーゼ栽培においては比較的低く、酸味とタンニンの穏やかなワインを生み出します。20世紀後半には、オーク樽による熟成も取り入れられ、果実味にチョコレートのようなニュアンスが加わり、長期熟成に耐えうるワインが造られるようになりました。

カルミニャーノは、トスカーナの伝統と革新が融合した、独自の魅力を持つワインです。その歴史と製法、そしてテロワールが織りなす味わいを、ぜひお楽しみください。

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