カルメットファーム

カルメットファーム：アメリカ競馬史に輝く名門牧場の興亡

ケンタッキー州レキシントンに位置するカルメットファームは、競走馬の生産と繋養を行う牧場であり、同時に馬主としても名を馳せてきました。1924年の創業以来、数々の名馬を世に送り出し、アメリカ競馬界に多大な貢献を果たした、まさに伝説的な存在です。しかし、その歴史は栄光と苦難の両面を併せ持ち、現代に至るまで幾多のドラマを紡いできました。

創業と初期の歩み

カルメットファームは、ベーキングパウダーで成功を収めた実業家、ウィリアム・モンロー・ライトによって設立されました。当初はイリノイ州にありましたが、後にケンタッキー州レキシントンに移転。牧場名は、ライトが創業したカルメット・ベーキングパウダー社に由来しており、この社名はインディアンのパイプの一種にちなんで名付けられました。

設立当初は、当時人気が高かった繋駕速歩競走用のスタンダードブレッドの生産が中心でした。ライトは、繋駕速歩競走の最高峰レースであるハンブルトニアン制覇を目指していましたが、残念ながら彼はその栄光を見ることなく他界しました。

サラブレッドへの転換と黄金時代

ライトの死後、息子のウォーレン・ライト・シニアが牧場の運営を引き継ぎます。ウォーレン・シニアは、サラブレッド生産に舵を切り、牧場の発展に大きく貢献しました。彼は優れたサラブレッドを購入し、戦略的な繁殖計画を実行。その結果、1930年代から数々の名馬が誕生します。

特に、イギリスから導入した種牡馬ブレニムと、自らが所有していたブルリーは、カルメットファームの黄金時代を支えた重要な存在でした。ブレニムからはワーラウェイ、ブルリーからはサイテーションといった2頭のアメリカ三冠馬が誕生。他にも、数々の名馬がカルメットファームから輩出され、アメリカ競馬界を席巻しました。この時代には、名調教師ベン・ジョーンズがカルメットファームの競走馬の調教に大きく貢献しました。

衰退と再生

しかし、カルメットファームの隆盛は永遠には続きませんでした。1980年代後半から経営難に陥り、主力種牡馬アリダーの不審死という衝撃的な事件をきっかけに、牧場は大きな危機に直面します。最終的に、1991年には破産を申請せざるを得なくなりました。

その後、カルメットファームはケネロットステーブルを経営するヘンリク・デ・クフャトコフスキによって買収され、経営再建の道を歩みます。しかし、経営陣の不正や訴訟といった問題も発生し、その後の運営は決して平坦ではありませんでした。現在、カルメットファームは新たなオーナーの下、新たな一歩を踏み出しています。

カルメットファームの遺産

カルメットファームは、アメリカ競馬の歴史に輝く多くの名馬を輩出しました。その功績は、アメリカ競馬名誉の殿堂博物館に選出された11頭以上の競走馬によって証明されています。ワーラウェイ、サイテーションをはじめ、多くの競走馬が、現代の競走馬生産に大きな影響を与え続けています。プリークネスステークスの最多勝利記録も、カルメットファームの偉業の一つです。

カルメットファームの歴史は、成功と失敗、栄光と苦難、そして再生というドラマチックな物語です。その物語は、これからもアメリカ競馬界の語り草として語り継がれていくでしょう。

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