カルロ・クリヴェッリ

カルロ・クリヴェッリ（Carlo Crivelli, 1430年頃? - 1495年）は、イタリアのルネサンス初期に活躍した画家です。ヴェネツィアで生まれましたが、師については詳しい記録が残っていません。しかし、15世紀に流行したパドヴァ派の工房の系統に連なる画家であったと考えられています。

クリヴェッリの作品は、金箔を施した黄金地のパネルに、明澄な色彩で描かれた祭壇画が特徴的です。ビザンティン美術の影響を受けた豪奢な装飾が目を引きます。当時、人物ごとに個別のパネルに描く多翼祭壇画は主流ではなくなっていましたが、クリヴェッリは伝統的なヴェネツィア・パドヴァ・タイプの構成や装飾手法を後年まで守り続けました。

彼の画業は高く評価されており、1490年にはナポリ公から騎士の称号を授与されたという記録も残っています。しかし、19世紀初頭まではほとんどの祭壇画が元の場所に残されていたにもかかわらず、ナポレオンの侵攻とイタリア統一の混乱によって取り外され、世界中に散逸してしまいました。現在では、幸運にも残されたごくわずかな作品が一部の礼拝堂や美術館で見られるのみとなっています。

20世紀のアメリカの小説家スーザン・ソンタグは、1992年に発表したエッセイ「Notes on "Camp"」の中で、クリヴェッリの絵画を「本物の宝石やトロンプ・ルイユ（だまし絵）の昆虫、石積みのひび割れなどが特徴的なキャンプの典型」と評しました。ソンタグは、このエッセイの中で様々な実例を挙げながら、美的態度や特質の一種を「キャンプ」と定義していますが、クリヴェッリの作品はその一例として挙げられています。

クリヴェッリの代表作としては、以下のような作品が挙げられます。

レンティの聖母（1472-1473年）（ニューヨーク、メトロポリタン美術館所蔵）
マグダラのマリア（1475年）（アムステルダム、アムステルダム国立美術館所蔵）
1476年の多翼祭壇画（1476年）（ロンドン、ナショナル・ギャラリー所蔵）
聖エミディウスのいる受胎告知（1486年）（ロンドン、ナショナル・ギャラリー所蔵）
サン・ドメニコ・ディ・カメリーノの祭壇画（1482年）（ミラノ、ブレラ美術館所蔵）

これらの作品は、いずれもクリヴェッリの独特な装飾性と、豪華で繊細な表現を堪能できるものです。彼の作品は、ルネサンス美術の中でも特異な存在として、今日でも多くの人々を魅了しています。

関連事項としては、以下のものが挙げられます。
レンティの聖母: クリヴェッリの代表作の一つで、その豪華な装飾と緻密な描写が特徴。
* ルネサンス: クリヴェッリが活躍した時代であり、美術史上の重要な転換期。

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