サン・ドメニコ・ディ・カメリーノの祭壇画

『サン・ドメニコ・ディ・カメリーノの祭壇画』は、イタリア初期ルネサンスの画家カルロ・クリヴェッリが1482年にテンペラと金を用いて描いた多翼祭壇画です。元々は、イタリアのマルケ州カメリーノに設置されていましたが、現在は各パネルがミラノのブレラ美術館、フランクフルトのシュテーデル美術館、そしてチューリッヒのアベッグ＝ストッカー・コレクションに分散して所蔵されています。ブレラ美術館には、中央パネル、左右両翼パネル、そして裾絵の一部が収蔵されています。

作品の来歴

この祭壇画は、ナポレオンによる美術品略奪後の1811年に、カメリーノのサン・ドメニコ教会からブレラ美術館に移送されました。この際、本来の額縁は失われ、複数の場面を描いたパネルの一部も所在不明となりました。かつては祭壇画の一部だった「大天使ガブリエル」と「受胎告知の聖母」もブレラ美術館に運ばれましたが、後にシュテーデル美術館へと移されました。

作品の特徴

中央パネルの「聖母子」は、クリヴェッリの他の作品、例えば『ロウソクの聖母』と比較すると、より自然主義的で抑制された表現が特徴です。祭壇画の写実性は、特に右翼パネルに描かれたカメリーノの守護聖人、聖ヴェナンティウスの手に顕著です。左翼パネルに描かれた聖ペテロの鍵と司教杖、宝石、殉教者ペテロを傷つけた刃物、豪華な金の装飾、ガラス瓶、聖ペテロの衣服のヴェール、基壇を飾る果物など、細部に至るまで質感豊かに描写されています。これらの緻密な描写は、それぞれの事物を生き生きと見せるために計算されています。

祭壇画の構図は、ニッコロ・アルンノが1480年にカメリーノのサン・ヴェナンツィオ教会のために制作した『サンティ・べッリ多翼祭壇画』に影響を受けていると考えられています。

祭壇画の構成パネル

以下は、祭壇画を構成していた各パネルです。それぞれの位置は、祭壇画の想定復元に基づいています。

中央パネル: 「聖母とヒワを持つ幼子イエス・キリスト」 - 190x78 cm、ブレラ美術館所蔵。「OPVS CAROLI CRVELLI VENETI M48II」の署名と1482年の制作年が記されています。
左翼パネル: 「聖ペテロと聖ドミニクス」 - 170x60 cm、ブレラ美術館所蔵。
右翼パネル: 「殉教者聖ペテロと聖ヴェナンティウス」 - 170x60 cm、ブレラ美術館所蔵。
上段左側: 「大天使ガブリエル」 - 54x38 cm、シュテーデル美術館所蔵。
上段右側: 「受胎告知の聖母」 - 54x38 cm、シュテーデル美術館所蔵。
上段中央: 「キリストの復活」 - 50x70 cm、アベッグ＝ストッカー・コレクション所蔵。
裾絵左側: 「聖アントニウス、聖ヒエロニムス、聖アンデレ」 - 25x62 cm、ブレラ美術館所蔵。
裾絵右側: 「聖大ヤコブ、シエナの聖ベルナルドゥス、ニコデモ」 - 25x60 cm、ブレラ美術館所蔵。

参考文献

『ブレラ　絵画館全作品ガイド』、SCALA、1977年　ISBN 978-888117680-9
Pietro Zampetti, Carlo Crivelli, Nardini Editore, Firenze 1986. [ISBN unspecified]
AA.VV., Brera, guida alla pinacoteca, Electa, Milano 2004. ISBN 978-88-370-2835-0

外部リンク

ブレラ美術館公式サイト、カルロ・クリヴェッリ『サン・ドメニコ・ディ・カメリーノの祭壇画』 (英語))


この祭壇画は、クリヴェッリの卓越した技術と初期ルネサンス美術の繊細さを今に伝える貴重な作品です。

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