カレンニー軍

カレンニー軍（Karenni Army、略称はKA）は、ミャンマーのカヤー州（かつてカレンニー州と呼ばれた地域）東部を中心に活動するカレンニー民族進歩党（KNPP）の軍事組織です。彼らの主要な目的は、ミャンマー連邦からの離脱と独立したカレンニー国家の樹立にあります。

この地域の独自の歴史は、ミャンマーがイギリスの植民地となる以前に遡ります。1875年、イギリス政府はビルマのコンバウン朝との条約の中で、カレンニー諸州が英緬いずれの支配下にも置かれない独立した存在であることを確認しました。この取り決めにより、カレンニー諸州はイギリス領ビルマの行政機構に直接組み込まれることはありませんでした。1892年には、地域の指導者たちがイギリスからの俸給を受け入れたことで「保護地域」（貢納国）という位置づけになりましたが、イギリス政府の内政への関与は限定的で、実質的な独立状態が保たれていました。

事態が大きく動いたのは、第二次世界大戦後です。1947年に制定されたイギリスからの独立後のビルマ連邦憲法では、カレンニーの三つの州を統合してカレンニー州とすることが定められました。さらに、この憲法は連邦成立から10年を経過した後であれば、この州が連邦から離脱する権利を有することも明記していました。しかし、1948年に連邦への編入に強く反対していたカレンニー人の指導者、U Bee Htu Re氏が、政府側の勢力に近い民兵によって暗殺されるという事件が発生し、地域の緊張は高まりました。

カレンニー軍は、こうした背景のもと、1957年に結成されました。彼らは憲法で認められた離脱権を行使し、カレンニー国家としての独立を達成するため、ミャンマー国軍との武力衝突を開始しました。長年にわたり戦闘が続き、過去には政府との間で停戦が試みられています。1995年には一度停戦協定が締結されましたが、わずか3ヶ月で破綻しました。また、カレンニー軍は、国軍寄りの立場をとるカレンニー民族人民解放戦線（KNPLF）やカヤン新領土党（KNLP）といった、他の少数民族武装勢力とも衝突を繰り返しています。

カレンニー軍は少年兵を利用しているとの批判も受けています。これに対し、カレンニー軍側は少年兵の存在を認める一方で、彼らは戦闘によって親を失った子どもたちが自らの意思で志願したものであると説明し、その正当性を主張しています。

2012年3月7日には、カレンニー民族進歩党（KNPP）と政府との間で、再び停戦協定が結ばれました。この時の交渉には、国連難民高等弁務官事務所（UNHCR）やブリティッシュ・カウンシル、そして在ミャンマーのアメリカ大使といった国際的なオブザーバーが立ち会いました。しかし、2021年のミャンマー国軍によるクーデター発生以降、事態は一変し、国軍とカレンニー軍との間の戦闘は再び激化しています。特に、2021年5月21日には、カレンニー軍はクーデター後に新たに組織された同盟勢力であるカレンニー諸民族防衛隊（KNDF）と共同で国軍と戦闘を行い、国軍側に数十名の死傷者が出たと報じられています。現在も、カヤー州を中心とした地域では、カレンニー軍やその連携勢力と国軍との間で厳しい衝突が続いています。

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