カレー粉

カレー粉：歴史、文化、そして多様な世界

カレー粉は、カレー料理に欠かせないスパイスの混合物です。ウコンや唐辛子など、数十種類のスパイスをブレンドすることで、独特の風味と色合いを生み出します。家庭で手作りされることもありますが、日本では主に既製品が販売されています。カレールーとは異なり、カレー粉はスパイスのみで構成されている点が大きな特徴です。

歴史：イギリス発祥、そして世界へ

カレー粉の歴史は、18世紀のイギリスに遡ります。クロス・アンド・ブラックウェル社が、インドのスパイスをブレンドして開発したことが始まりとされています。同社は貴族向けのケータリングを手掛けており、効率化のためにスパイスを予め混合したのです。この「C＆Bカレーパウダー」は人気を博し、イギリスの家庭料理にカレーが定着するきっかけとなりました。1810年にはオックスフォード[[英語辞典]]にも「カレーパウダー」が掲載されるほど、広く普及しました。しかし、同社の主力商品ではなかったため、現在はレシピも残されていません。

明治時代にイギリスから日本に伝わったカレーライスは、国民食と呼ばれるほどに愛される料理となりました。

日本におけるカレー粉：国産化への道のり

日本では1905年にハチ食品の前身である大和屋が、カレー粉の製造販売を開始しました。その後、1923年にはエスビー食品の前身である日賀志屋も参入し、国産カレー粉市場が形成されていきました。当初は、輸入品である「C＆B」カレー粉が主流でしたが、1931年の輸入品偽造事件を機に国産カレー粉への転換が進みました。

日本のカレー作りの手法は、初期にはカレー粉を小麦粉と炒め合わせてカレールウを作り、ダシと具材を合わせたものでした。しかし、1960年代に即席カレールウが登場すると、カレー粉単体の需要は減少しました。それでも、ドライカレーやカレーピラフなど、様々な料理の調味料として、現在も広く利用されています。

1923年のエスビー食品による国産カレー粉の発売は、しばしば「国産第一号」として認識されていますが、ハチ食品が先に販売を開始していたという事実も存在します。エスビー食品は、独自にスパイスを配合した点に着目し「純国産カレー粉」と主張しています。

現在のカレー粉市場：多様な選択肢

日本のカレー産業は、エスビー食品とハウス[[食品]]が中心となっていますが、カレー粉市場では「S＆B赤缶」が圧倒的なシェアを誇ります。GABANなどのスパイスメーカーもカレー粉を販売しており、ハウス[[食品]]との提携関係にあるものもあります。老舗メーカーのインデアン食品やナイル商会も、独自のカレー粉を販売し続けています。近年では、オーガニックやフェアトレード、特定の料理に特化したブレンドなど、多様なカレー粉が市場に流通しています。自家製カレー粉を作る人も増えています。

カレー粉の材料と特徴

カレー粉は、様々なスパイスをブレンドして作られます。辛味にはカイエンペッパーや唐辛子、風味にはクミンやコリアンダー、色付けにはターメリックなどが使用されます。メーカーによって配合は異なり、それぞれのブランドが独自の味を追求しています。カレー粉はスパイスのみで構成されているため、塩分やダシは含まれていません。調理時には、これらを別途加える必要があります。

保存方法

カレー粉は、湿気や酸素によって香りが劣化するため、冷暗所で保存することが大切です。ガラス瓶など、気密性の高い容器を使うことが推奨されます。ポリ袋は保存に適していません。また、直射日光や高温多湿の場所を避け、食品害虫の被害にも注意が必要です。

世界のカレー粉事情：インド、タイ、フランス、ドイツ、香港

インドでは、家庭で手作りされるマサラがカレー粉の原型とも言われています。しかし、カレー粉は既製品であり、マサラとは明確に区別されます。タイでは、タイカレーと呼ばれる料理にゲーンペーストが使われますが、カレー粉を使ったレシピも存在します。フランスでは、かつて薬剤師が開発した「カリ・ゴス」が有名でした。ドイツではソーセージ料理「カリーヴルスト」に使われます。イギリスの植民地であった香港では、カレーライスなどの様々なカレー料理が親しまれており、独自に配合されたカレー粉も人気です。

カレー粉は、世界各地で愛され、それぞれの文化に溶け込んでいるスパイスミックスなのです。

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