カワゴンドウ

カワゴンドウ（イラワジイルカ）

カワゴンドウ（Orcaella brevirostris）は、マイルカ科に属する海棲哺乳類で、イラワジイルカとも呼ばれています。東南アジアの河川や河口、沿岸に生息し、その独特な外見と生態で知られています。

分類

カワゴンドウは、1866年にリチャード・オーウェンによって新種として報告されました。かつてはシロイルカに似ていることからイッカク科やシロイルカ科に分類されることもありましたが、現在ではマイルカ科に分類されています。遺伝子解析の結果、シャチに近縁であることが判明しています。

種小名の「brevirostris」はラテン語で「短い口吻」を意味し、和名の「カワ」は河口付近や河川に生息すること、そして「ゴンドウ」は頭部の形状がゴンドウクジラに似ていることに由来します。別名の「イラワジ」は、生息地であるエーヤワディー川（旧称イラワジ川）に由来します。

2005年には、オーストラリア北部に生息する個体群が、カワゴンドウとは異なる新種、オーストラリアカワゴンドウ（Orcaella heinsohni）であることが判明しました。

生息域

カワゴンドウは、海岸近くや河川にも生息するため、他の沿岸性の鯨類と同様に、人間活動の影響を受けやすいことが懸念されています。

主な生息地は、ミャンマーのエーヤワディー川、ベンガル湾、ガンジス川、メコン川などの東南アジアの河川や河口、海岸近くの浅瀬です。エーヤワディー川では、河口から1450km以上も上流にまで分布しています。しかし、エーヤワディー川、メコン川、マランパヤ海峡、マハカム川、イロイロ・ギマラス海峡、ソンクラー湖などの個体群は、個体数が数十頭にまで減少しており、絶滅の危機に瀕しています。一方で、バングラデシュでは約5800頭が生息しており、保護活動が積極的に行われています。

オーストラリアカワゴンドウは、ニューギニアやオーストラリア北部に生息しています。

形態

生まれたばかりの個体は体長約1m、体重約10kgですが、成長すると体長2.75m、体重115-130kg以上に達します。

カワゴンドウは、スナメリやシロイルカを彷彿とさせる、大きなメロン状の丸い頭部が特徴的です。口吻は短く不明瞭で、背びれは短く丸みを帯びた三角形をしています。胸びれは長く、幅広いです。体色は明るい灰色ですが、腹側はより白っぽくなっています。泥の多い海域では、実際よりも白く見えることがあります。

スナメリやシロイルカと同様に、首が柔軟で、頭部を左右に回して背後を見ることができます。

生態

カワゴンドウの遊泳速度は、他の外洋性イルカに比べて遅く、形態や生息環境が似ているスナメリとの類似性が見られます。水面へは回転しながら上昇し、深く潜水する際には尾びれを水面に出して力強く泳ぎます。

スナメリと同様に、スパイホップの際に口から水を吐き出す行動が確認されています。

通常、6頭前後の群れ（ポッド）を形成しますが、特定の海域では25頭に達することもあります。主な餌は、淡水魚、海水魚、イカなどの頭足類です。寿命は約30年です。

人間との関わり

ミャンマーのエーヤワディー川では、地元の漁師と協力して漁を行う相利共生の関係を築いています。

しかし、カワゴンドウは人間活動による脅威にさらされています。油脂を採取するための捕獲は法的に禁止されていますが、広大な海岸線を監視することは困難であり、実効性は不透明です。刺し網による混獲や、爆薬を用いた漁による負傷も頻繁に発生しています。

生息数の減少と生息域の縮小は深刻な問題となっており、インドのチルカ湖では、刺し網や地引き網によって個体数がわずか50頭ほどにまで減少しました。また、河川を漁網で塞ぐことで、カワゴンドウの移動を制限し、孤立させてしまう問題も発生しています。IUCNは、メコン川、エーヤワディー川、マハカム川、マランパヤ海峡、ソンクラー湖に生息するカワゴンドウを絶滅寸前種に指定しています。

カワゴンドウは、水族館などで飼育・展示され、イルカショーなどのパフォーマンスを行うこともあります。そのため、指示に従って行動できるようにトレーニングが行われます。

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