カワシンジュガイ

カワシンジュガイ（川真珠貝）

カワシンジュガイ（Margaritifera laevis）は、イシガイ目カワシンジュガイ科に属する二枚貝で、2022年に希少野生動植物種に指定されました。

特徴

殻長は最大15cm程度に成長し、殻の色は褐色から黒色まで個体差が見られます。内側は真珠光沢を帯びているのが特徴です。遺伝的、形態的にコガタカワシンジュガイ（Margaritifera togakushiensis）と区別されます。

寿命は一般的に50年から100年程度と推定されています。日本産の個体では80年程度の寿命が見込まれ、海外では100年以上生きた個体の報告もあります。北海道東部の別寒辺牛川では、150年を超える個体が存在する可能性も指摘されています。

生態

カワシンジュガイは、殻の半分ほどを川底に突き刺すようにして生息し、川の地形や流れを安定させる役割を果たしています。幼生であるグロキディウムは、0.07-0.46mmほどの大きさで、サケ科の魚（アマゴ、イワナ、ヤマメなど）のエラに1-2ヶ月寄生します。コガタカワシンジュガイはアメマスやイワナを宿主として利用します。

分布

カワシンジュガイは、サハリン、千島列島、北海道、本州の冷水が流れる河川に生息しています。コガタカワシンジュガイとは、北海道別海町・清里町・富良野市、長野県長野市などで分布域が重なることが確認されています。

人間との関わり

カワシンジュガイは、縄文時代から食用として利用されてきました。また、真珠やボタンなどの装飾品としても利用されてきました。アイヌの人々は、貝殻を石包丁のように加工し、穀物の穂首を刈る道具として使用していました。

近年では、タナゴ類の繁殖にも利用されています。ミヤコタナゴは、他の二枚貝よりもカワシンジュガイを好んで産卵場所に選択することが研究で示唆されています。

しかし、サケ科魚類のエラにグロキディウム幼生が大量に寄生すると、魚が窒息死する可能性があるため、水産分野では寄生虫として扱われることもあります。

保全状況

カワシンジュガイは、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類 (EN)に指定されており、特定第二種国内希少野生動植物種にも指定されています。生息地の改修工事や水質悪化、タナゴ類の繁殖を目的とした乱獲などが、個体数減少の主な原因となっています。また、稚貝が確認できない個体群も存在し、将来的な消滅が懸念されています。

2022年以前は、販売目的での採取や譲渡に対する規制がなかったため、大量に取引されていましたが、特定第二種国内希少野生動植物種への指定により、これらの行為は禁止されました。指定直前には、ネットオークションサイトのヤフオク!が、駆け込み需要を防ぐためにカワシンジュガイとコガタカワシンジュガイの出品を禁止する措置を取りました。

天然記念物

地域レベルでは、岡山県真庭市、岩手県岩泉町・滝沢市・野田村、長野県長野市、広島県庄原市などで天然記念物に指定されています。

その他

地域によっては、カワシンジュガイのことをカラスガイと呼ぶことがあります。

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