ミヤコタナゴ

ミヤコタナゴ（Tanakia tanago）

ミヤコタナゴは、コイ目コイ科タナゴ亜科に属する日本の固有種であり、美しい姿を持つ小型の淡水魚です。かつては東京都内でも見られましたが、都市開発の影響で生息地が減少し、現在では絶滅危惧種として保護されています。

特徴

形態: 全長約7cm。オスは繁殖期に鮮やかな婚姻色をまとい、背びれや尾びれが美しく彩られます。
生態: 湧水が豊富な細流や沼に生息し、水生昆虫や藻類などを食べます。二枚貝に産卵する独特の繁殖生態を持ちます。
分布: かつては関東地方に広く分布していましたが、現在では千葉県、栃木県の一部にのみ生息しています。

生息地の地域変異

地域によって体高や婚姻色に違いが見られ、密漁捜査に役立つこともあります。

体高: 埼玉県産は低く、神奈川県産は高い。
オスの婚姻色: 栃木県大田原市付近産は青色が強く、神奈川県産は赤茶色が強い。
背鰭の縁取り: 千葉県勝浦市産は濃いピンク色。
臀鰭の縁取り: 埼玉県産は乱れる。
尾鰭: 一宮川水系産は大半が黒色。

他のタナゴとの見分け方

ミヤコタナゴに似たタナゴとして、アブラボテやヤリタナゴがいます。

アブラボテ: 形態や生態が似ていますが、ミヤコタナゴほど湧水への依存度が高くありません。また、アブラボテは西日本に分布します。
ヤリタナゴ: 幼魚の頃はミヤコタナゴとよく似ていますが、成魚になるとミヤコタナゴの方が体高が高く、尾びれが丸みを帯びています。

絶滅の危機と保護

ミヤコタナゴは、都市開発や河川改修による生息地の破壊、水質汚染、外来種の影響などにより、個体数が激減しています。

指定状況: 国の天然記念物、国内希少野生動植物種
レッドリスト: 絶滅危惧IA類（環境省）

現在、ミヤコタナゴの保護のため、生息地の保全や繁殖事業が行われています。しかし、本種は湧水に続く小水路と水田耕作地という二次自然に強く依存しており、産卵母貝であるマツカサガイの維持には定期的な水路の土揚げや農業用溜池の池乾しなど手入れが欠かせません。人間の耕作生産活動と密接不可分な関係にあり、人手不足や後継者難による耕作放棄など農村社会の荒廃が、本種の将来に暗い影を落としています。また、ゴルフ場開発や圃場整備事業、河川のコンクリート護岸化など、生息地破壊につながる開発も後を絶ちません。地域社会の理解と協力が不可欠です。

今後の課題

ミヤコタナゴの保護には、以下の課題があります。

生息地の保全と再生
外来種の侵入防止
地域住民の理解と協力
密放流対策

ミヤコタナゴは、日本の貴重な自然の象徴です。その美しい姿を未来に残すため、私たち一人ひとりが保護に関心を持ち、行動することが求められています。

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