カワノナツダイダイ

カワノナツダイダイ：独特の風味を持つ柑橘

カワノナツダイダイは、ミカン科ミカン属に属する柑橘類の一種です。その歴史は昭和10年、大分県津久見市で川野豊氏によってナツダイダイの枝変わり種として発見されたことに始まります。甘夏橙、甘夏蜜柑、甘夏柑などとも呼ばれ、独特の風味と高い糖度が特徴です。

特徴：酸味が少なく、糖度が高い

一般的なナツダイダイと比較して、カワノナツダイダイは減酸が早く、酸味が少ないのが大きな特徴です。そのため、糖度の高さも際立ち、生食でその甘みと風味を存分に楽しむことができます。さらに、その用途は多岐に渡ります。生食だけでなく、ジュースなどの加工品や、ポン酢の材料としても広く利用され、近年ではサラダの具材としても人気が高まっています。

生産の歴史：昭和期からの変遷

昭和25年に品種登録された後、昭和30年頃から増殖が進み、昭和40年頃にはナツダイダイからの更新が盛んに行われました。しかし、昭和46年のグレープフルーツ輸入自由化を境に、カワノナツダイダイの生産量は減少傾向にあります。輸入柑橘類との競争激化が、生産量の減少に影響を与えたと考えられます。

主な産地：西日本の各地で栽培

カワノナツダイダイは、ウンシュウミカンと自然交配しやすく、種にウンシュウミカン由来の遺伝子が混ざるため、カワノナツダイダイの産地とウンシュウミカン産地が重なることは少ない傾向にあります。

平成26年現在、出荷量でトップを走るのが鹿児島県です。阿久根市など、県内各地で栽培されています。それに続き、熊本県（八代市など）、愛媛県（愛南町など）、和歌山県（日高川町など）が主要な産地となっています。

特に熊本県芦北地方では、戦後間もない昭和24年から栽培が始まりました。高度経済成長期、周辺海域の環境汚染により漁業が困難になったことを背景に、漁業従事者らの新たな生業としてカワノナツダイダイ栽培が発展したという歴史的な経緯があります。これは、地域経済の活性化に大きく貢献した事例と言えます。

まとめ：希少な柑橘の未来

カワノナツダイダイは、その独特の風味と高い糖度で、多くの消費者に愛されてきました。しかし、輸入柑橘類との競争や生産量の減少という課題も抱えています。生産地の努力と消費者の需要が、この希少な柑橘類の未来を左右するでしょう。今後の更なる発展が期待されます。

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