カワラヒワ

カワラヒワ（河原鶸）

カワラヒワ（学名：Chloris sinica）は、スズメ目アトリ科に分類される鳥類の一種です。英名は"Oriental Greenfinch"で、これは東洋に生息する緑色のアトリ類を意味します。種小名の sinica は、中国を指します。

形態

体長は約14cm、翼開長は約24cmで、スズメと同程度の大きさですが、やや小ぶりです。全体的に黄褐色をしており、太い嘴と、翼にある鮮やかな黄色の模様が特徴的です。この黄色い模様は、初列風切と次列風切に混じって見られます。

分布

カワラヒワは、東アジアに広く分布しており、具体的には中国、モンゴル、ロシア東南部、朝鮮半島、そして日本で見られます。日本国内では、ほぼ全域に留鳥として生息していますが、北部に生息する個体は、冬になると温暖な地域へ移動することが知られています。

鳴き声

カワラヒワの地鳴きは、「キリリ、コロロ」と聞こえることが多く、メジロの「チリチリ」という鳴き声に似ています。しかし、カワラヒワの方がより声量が大きく、太い鳴き声を出すため、注意して聞けば識別は容易です。また、さえずりは「チョンチョンジューイン」と聞こえます。「ジューイン」の部分は、センダイムシクイのさえずりの一部とよく似ていますが、さえずり全体を比較することで区別できます。

生態

カワラヒワは、低山から低地にかけての森林に広く生息しています。近年では、都市部の市街地の公園や河原などでもその姿が観察されるようになりました。繁殖期には、低山から平地にかけての針葉樹林などで番いで生活し、小さな縄張りを持ちます。秋季以降は、数十羽から数百羽の群れを形成することがあります。秋には、雄が樹上で集団で求愛ディスプレイを行う様子が見られます。

食性は主に植物食で、植物の種子を好んで食べます。人為的な環境下では、ヒマワリなどの種子を特に好み、太い嘴で大きな種子をついばむ様子がよく観察されます。

繁殖期には、樹木の枝などの茂みの中に、枯れ枝や細根などを使って椀状の巣を作ります。一度に産む卵の数は5個前後です。都市部の市街地で繁殖する個体は、巣の材料としてビニール紐などを利用することがあります。抱卵日数は11〜13日、育雛日数は14日程度です。

日本国内で見られる亜種・近縁種

カワラヒワは、全体で6亜種に分類されています。日本国内では、基本種である亜種カワラヒワ（またはコカワラヒワ、学名 Carduelis sinica minor）の他に、以下の亜種が観察されています。

オオカワラヒワ

学名：Carduelis sinica kawarahiba 、英名："Grey-capped Greenfinch"

オオカワラヒワは、全体的に体色が薄く、頭部から肩にかけて灰色がかっているのが特徴です。英名はこの特徴に由来しています。日本国内では、主に冬鳥として観察されます。

オガサワラカワラヒワ

学名：Carduelis kittlitzi

オガサワラカワラヒワは、小笠原諸島にのみ留鳥として分布しています。絶滅危惧IA類 (CR)（環境省レッドリスト）および国内希少野生動植物種（種の保存法）に指定されています。かつては本州のカワラヒワと同種とされていましたが、2020年5月27日にDNA分析の結果、遺伝的にも形態的にも異なる種であることが判明しました。

脚注

参考文献

高野伸二編　『山溪カラー名鑑　日本の野鳥』、山と溪谷社、518-519頁、1985年
黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、平凡社、1986年、160頁。

関連項目

日本の野鳥一覧

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