カンプス・マルティウス

カンプス・マルティウスの歴史

カンプス・マルティウス（Campus Martius）は、古代ローマ時代における重要な公共地域で、広大な面積を誇ります。もともとは王政ローマのタルクィニウス・スペルブスの小麦畑であったと伝えられ、共和政ローマが成立した際に歴史的な価値を持つ場所に変貌しました。この地域は、テヴェレ川、クイリナーレの丘、カンピドリオの丘に囲まれた低地に位置し、ローマの初期の軍事訓練や凱旋式の舞台として利用されました。

軍神マールスにちなんで名付けられたこの場所では、兵士たちが集まり訓練を受け、さらに外国大使との謁見が行われる場にも利用されていました。こうした歴史的背景から、紀元前221年にはキルクス・フラミニウスという戦車競技場も建設され、この地域は人々の注目を集めることとなります。やがて、スッラの時代から都市としての整備が進み、重要な政治的な決定が行われる場として利用されるようになりました。

歴史を通じてカンプス・マルティウスは徐々に発展し、紀元前55年にはポンペイウス劇場が建設され、記念的な建築物が次々と増えていきました。ユリウス・カエサルがこの地で暗殺されるなど、政治的にも重大な出来事が起こる場所でもありました。カンプス・マルティウスの政治的役割は後のアウグストゥスの時代にも続き、彼の時代には正式にローマ市内の一部となり、様々な公共建築や記念碑が立ち並ぶようになりました。

アウグストゥスによって改修され、アラ・パキス（平和の祭壇）などが設けられたことで、カンプス・マルティウスは平和の象徴的な場ともなりました。周囲にはアグリッパ浴場やパンテオンが建設され、地域はますます繁栄を遂げます。しかし、ローマ帝国の終焉に伴って、次第にその繁栄は失われていきます。

中世に入ると、カンプス・マルティウスは再び注目を浴びます。人口の減少とともに周囲の丘が捨てられ、この地域に人々が集中しました。バチカンへの巡礼者が多く訪れ、経済的にも重要な役割を果たすこととなりました。レオ10世の時代には、バチカンと市内を結ぶ道が整備され、衛生状態も改善されました。このように、カンプス・マルティウスは中世の重要な文化の中心地へと発展していきました。

近代初期には、ローマがイタリア王国の首都に定められると、再び人口が増加し始めました。しかし、氾濫を防ぐための工事が行われた結果、かつての川沿いの地域は閉ざされてしまいます。こうして、カンプス・マルティウスは古代の栄光を持ちながらも、徐々に変容を遂げていくこととなります。

カンプス・マルティウスは、現在もローマの重要な歴史的地域としてその存在感を示しており、バチカンや他の歴史的施設と密接に関連付けられています。

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