カンボジアの鉄道

カンボジアの鉄道は、総延長590.9kmに及ぶ単線非電化の路線網で、軌間は1,000mmです。主に北線と南線の2つの路線が存在し、かつては公共事業・運輸省管轄下のカンボジア・ロイヤル鉄道が運営していましたが、現在は地場資本のロイヤルグループが運営しています。

歴史

1890年頃、シェムリアップ付近で石材輸送用の鉄道が敷設された記録がありますが、詳細は不明です。本格的な鉄道建設は、フランス植民地時代の1929年に北線が着工されたことから始まります。プノンペンとポイペトを結ぶこの路線は、農産物や木材の輸送を目的としていました。

1932年にはプノンペンとプルサト間が開業し、1942年には全線が開通しました。1943年からは、隣国タイのタイ国有[[鉄道]]との間で国際列車の運行も開始されましたが、一部中断期間を経て1961年に終了しました。

南線は、シアヌークビルの港湾における輸出入貨物の取り扱いを目的として、1960年に建設が開始され、1969年に全線が開通しました。これにより、カンボジアの鉄道網は、北線と南線合わせて約650kmとなりました。

しかし、1970年代のカンボジア内戦によって施設は破壊され、大きな荒廃に見舞われました。ポル・ポト政権下では鉄道員が農村へ追放され、鉄道運営は一時的に混乱しましたが、後に鉄道員が呼び戻されて再び運営に当たることになりました。

内戦終結後、アジア開発銀行などの支援を受けて鉄道の復旧が進められました。2007年からは本格的な「鉄道リハビリプロジェクト」が開始され、既存路線の改良や隣国との接続事業が進められました。

2010年には南線のプノンペンからカンポート州トゥクミアス間が完成し、2016年にはシアヌークビルまでの旅客輸送が再開されました。北線も復旧工事が進められ、2018年にはプノンペンからポイペトまでの全線運行が可能となり、2019年にはタイとの国境で線路が45年ぶりに接続されました。

運行事業者

2009年まではカンボジア王立鉄道が運営していましたが、その後トールロイヤルを経て、現在はロイヤルグループが単独で運営しています。ロイヤルグループは運営改善を求められており、中国の支援も検討されている状況です。

路線

書類上は北線に49駅、南線に27駅がありますが、内戦の影響で多くは機能していません。全線単線非電化であり、運転士の注意に頼った運行がされています。軌道の老朽化も深刻で、保線作業が十分に行われていませんでした。

北線

首都プノンペンから北西方向へ伸びる路線で、ほぼ平坦な地形を走ります。2018年にプノンペンからポイペトまでの全区間が再開され、タイとの国境を越えてアランヤプラテートまで接続しています。かつてはプノンペンとバンコクを結ぶ国際列車が運行されていました。

南線

プノンペンから分岐してシアヌークビルに至る路線で、勾配が少なく橋梁の状態も比較的良好です。シアヌークビルは重要な港湾都市であり、経済特区に指定されています。中国による高速鉄道建設計画も存在します。

空港線

2018年にはプノンペン国際空港への支線が開業しましたが、2020年に運休し、レールは埋められました。

運行状況

貨物輸送は減少傾向にありましたが、近年は改善の兆しが見られます。旅客列車は、治安上の問題などから運休が多かったのですが、2016年に南線で再開されました。北線も2018年に全線運行が再開しましたが、遅延や運休が多い状況でした。

現在では、南線と北線の一部区間で、1日1往復の旅客列車が運行されています。使用車両は、空港シャトル路線で使用されていたものや、ディーゼル機関車牽引の客車などです。

車両

蒸気機関車

動態保存されている蒸気機関車が1両存在します。また、静態保存されている機関車もあります。

ディーゼル機関車

様々な形式のディーゼル機関車が運用されています。フランス製やチェコスロバキア製の機関車、近年ではインド製の機関車も導入されています。貨物輸送にはインド製の機関車が主に用いられます。

気動車

以前は旧式の気動車が使われていましたが、近年メキシコ製やタイ製の新型気動車が導入されています。

客車

かつては荒廃していた客車も、改修工事によって内外装が更新され、冷房装置も設置されています。

貨車

有蓋車、タンク車、コンテナ車など様々な種類の貨車が使用されています。

今後の計画

将来的には、プノンペンからベトナム国境に至る路線を整備し、昆明・シンガポール鉄道構想を完成させる計画があります。これにより、東南アジア縦断鉄道網の一翼を担うことが期待されています。また、ラオスと連絡する路線の構想も存在します。

バンブートレイン

カンボジアの鉄道では、線路を無許可で走行する「バンブートレイン」と呼ばれるトロッコのような車両が存在します。地元住民が自作したもので、旅客・貨物輸送に利用されています。しかし、鉄道の復旧が進むにつれて、その運行は制限されつつあります。

隣接国との鉄道接続状況

タイ：接続あり
ラオス：接続なし
* ベトナム：接続なし

まとめ

カンボジアの鉄道は、内戦による大きな被害から復興を遂げ、現在は旅客・貨物輸送を担っています。老朽化した施設の改修や、隣国との接続事業など課題も多く残されていますが、今後の発展が期待されています。

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