カーシー国

カーシー国の概説

カーシー国（カーシーこく）は、古代インドにおける重要な王国のひとつであり、サンスクリット語では काशी（Kāśī）と表記されます。この王国は、ガンジス川の中流域に位置し、その中心都市であるヴァーラーナシーは、後にこの地域全体を指す名前として使われるようになりました。カーシー国は十六大国の一つとされており、歴史上の出来事によりコーサラ国に滅ぼされました。

成立にまつわる伝説

カーシー国の成立については、いくつかの伝説が伝えられています。『バーガヴァタ・プラーナ』によると、カーシー王朝は月の神アーユの子孫であり、王の名をクシャトラヴリッダとし、その後はカーシやカーシャといった名前が受け継がれました。特に、カーシの曾孫ダンヴァンタリはアーユルヴェーダ医学の創始者として名高い存在です。また、彼の系譜にあたるディヴォーダーサやプラタルダナも重要な人物とされています。他方、『ハリ・ヴァンシャ』では異なる系図が描かれていますが、共通する点がいくつか存在します。

後期ヴェーダにおけるカーシー国

後期ヴェーダ時代のカーシー国は、その王であるアジャータシャトルがクシャトリヤの出身であり、哲学的な対話を展開する思想家として知られています。彼は『ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド』の中で、バラモンのガールギヤとの対話を通じて多くの知恵を広めました。

叙事詩とプラーナに描かれる歴史

『マハーバーラタ』では、カーシー国のハリヤシュヴァ王の時代にハイハヤ族の侵入が描かれています。この侵入によりハリヤシュヴァ王が殺され、その子スデーヴァもまた同様の運命を辿ります。ディヴォーダーサが王位を継ぐと、彼は首都ヴァーラーナシーの要塞化を進めますが、最終的にはハイハヤ族に敗北し、亡命することとなります。後に、プラタルダナがハイハヤ族を破り、カーシー国の復興を果たしました。

仏典におけるカーシー国

カーシー国は仏教の時代においても重要な地位を持っており、十六大国のうちの一つに数えられます。しかし、仏陀が教えを広める時代には、既にコーサラ国に滅ぼされていました。サールナートはこの地域に位置しており、仏陀の初転法輪が行われた場所とされています。また、コーサラ国のプラセーナジット王の妹がビンビサーラ王に嫁ぐ際、カーシー国の村が持参金として提供されたことも記録されています。

結論

カーシー国は、その文化的遺産や歴史において、古代インドにおける重要な王国でした。様々な文献に登場し、伝説や哲学、戦争の物語が語り継がれています。カーシー国の影響は、後の時代にも多くの人々に受け継がれていきました。

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