プラセーナジット

コーサラ王プラセーナジット：釈迦と関わる古代インドの君主

プラセーナジット王は、紀元前6世紀頃、または5世紀頃の中インドに栄えたコーサラ国を治めた王です。サンスクリット語ではPrasenajit、パーリ語ではPasenadiと表記され、様々な音写が存在します。漢訳では「勝光」、「勝軍」など、力強さと威厳を思わせる訳語が用いられています。

王の出自と即位

プラセーナジット王の出自については、ブラフマダッタ王、もしくはマハーコーサラ前王の子という説が有力です。タキシラで教育を受けた後、王位を継承したと伝えられています。釈迦の成道年に即位したという記述も見られます。

強大なコーサラ国

プラセーナジット王は、マガダ国と並ぶ中インドの二大強国の君主でした。彼は、実妹であるコーサラ・デーヴィーをマガダ国王ビンビサーラに嫁がせ、カーシー国を婚姻の持参金として与えることで、両国の友好関係を築きました。この政治的な婚姻は、コーサラ国の安定と繁栄に大きく貢献したと考えられます。

妃と子供たち

プラセーナジット王の家族構成は、仏典によって異なる記述が見られます。複数の妃がいた可能性も示唆されています。中でも有名なのはマッリカー夫人（末利夫人）で、第一妃、もしくは第二妃であったと考えられています。彼女との間に生まれた子供については諸説あり、明確な記録は残っていません。

仏典には、プラセーナジット王とマッリカー夫人が「この世で一番愛しいもの」について議論した逸話が記されています。夫人の「自分自身」という答えに疑問を抱いた王は釈尊に相談し、自己愛と他者への慈しみの関係について教えを受けたというものです。

王子たちの中で特に有名なのは、ジェータ太子（祇陀太子）とヴィドゥーダバ太子（毘瑠璃王）です。ジェータ太子は、自身の所有する林園をスダッタ長者（須達多）に譲り、祇園精舎の建設を支援したことで知られています。勝鬘夫人は、プラセーナジット王の娘であると伝えられています。

ヴィドゥーダバ太子に関しては、母親に関する異説が存在します。一説には、釈迦族の指導者が召使に生ませた娘を母親とする記述があり、この出自を恥じたヴィドゥーダバ太子が、父、母、そして釈迦族への復讐を誓ったとされています。これらの記述は、当時の社会構造や身分制度の一端を垣間見せています。

王位簒奪と最期

プラセーナジット王は、息子のヴィドゥーダバ太子によるクーデターによって王位を追われます。マガダ国に逃れたものの、そこで命を落としたと伝えられています。彼の死は、コーサラ国の勢力図の変遷、そして古代インドにおける王権の移り変わりを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

まとめ

プラセーナジット王の生涯は、古代インドの歴史、特にコーサラ国とマガダ国の関係、そして仏教との関わりを知る上で重要な手がかりとなります。仏典に記された数々の逸話や、複数の異説が存在する点も考慮することで、より立体的な人物像が見えてくるでしょう。彼の治世と最期は、古代インドの権力闘争や社会構造を理解する上で貴重な資料となっています。今後の研究においても、プラセーナジット王に関するさらなる解明が期待されます。

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