カーディリー教団

カーディリー教団は、イスラム教におけるスーフィズム（神秘主義）の教団（タリーカ）の一つで、アブド・アルカーディル・アルジーラーニーを創始者としています。この教団は、その教えと影響力で、イスラム世界に広範囲にわたり重要な役割を果たしてきました。

起源と発展

カーディリー教団の創始者であるアブド・アルカーディル・アルジーラーニーは、1077年に現在のイラン・ギーラーン州で生まれました。彼はバグダッドに移り住み、高名な学者であるアブー・サイード・アル＝ムバーラク・ムハッラミーの学校で学びました。1119年にムハッラミーが亡くなると、アルジーラーニーがその教えを引き継ぎ、学者・説教師としての名声を確立しました。彼のもとには多くの信者が集まり、彼のための修道場（リバート）が建てられました。

1166年にアルジーラーニーが亡くなると、その息子の一人であるアブドゥル・ワッハーブが教団の指導者（シャイフ）の地位を継承しました。当時のバグダッドでは、スフラワルディー教団が勢力を拡大しており、アッバース朝カリフの支援を受けていました。これに対抗するように、アルジーラーニーの息子アブドゥル・ラザクは、父の聖人伝を出版し、彼の業績と名声を広く知らしめました。

1258年のバグダッド陥落後も、カーディリー教団は各地に広まり、繁栄しました。15世紀末までには、モロッコ、スペイン、トルコ、インド、エチオピア、ソマリア、マリなど、広範囲にわたる地域に支部が設立されました。この拡大は、教団の教えが多様な文化圏に適応し、受け入れられたことを示しています。

他の勢力との関係

16世紀初頭、サファヴィー朝がバグダッドを支配した際には、カーディリー教団のシャイフが地域の筆頭スーフィーとして認められました。これは、カーディリー教団が持つ影響力と、その柔軟性を示しています。1534年にオスマン帝国がバグダッドを占領した際、オスマン帝国のスレイマン1世は、教祖アルジーラーニーの霊廟を建設し、カーディリー教団をバグダッドにおける協力者としました。これは、カーディリー教団が持つ地域での影響力をオスマン帝国が認めたことを示しています。

中国への伝播

17世紀には、カーディリー教団のシャイフであったフワージャ・アブドゥル・アッラーが中国（清朝）に渡り、各地で説教を行いました。彼は1689年に中国で亡くなるまで、その教えを広め続けました。彼の弟子の一人であるチー・ジンイーは、教団の教えを中国に定着させる上で重要な役割を果たしました。

その他の地域への拡大

カーディリー教団は、オスマン帝国が支配したヨーロッパ地域や、インド南西部のケーララ州などにも広がりました。これらの地域では、教団の教えが地元の文化と融合し、多様な形で発展を遂げました。カーディリー教団の広がりは、その教えが多様な文化圏に適応し、普遍的な魅力を持つことを示しています。

まとめ

カーディリー教団は、アブド・アルカーディル・アルジーラーニーを祖とする、イスラム世界で重要なスーフィズム教団の一つです。12世紀にバグダッドで誕生し、その教えはイスラム世界全体に広まりました。教団は、政治的、社会的な変化にも対応し、その影響力を維持し続けています。その教えは、今日でも多くの信者によって実践されており、イスラム神秘主義の重要な一部を担っています。

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