カートリー・ビール

カートリー・ビール（Kurtley James Beale）は、1989年1月6日、オーストラリアのシドニー郊外ブラックタウンに生まれた、ラグビーユニオン界で知られる選手です。彼のプレースタイルは、センター、フライハーフ、そしてフルバックと、バックスの主要なポジションを柔軟に担える高いユーティリティ性にあります。身長188cm、体重90kgの体躯を持つ彼は、「Curly Bill」の愛称で親しまれています。特に注目すべきは、彼がオーストラリアの先住民であるアボリジニの血を引いていることです。

ビールのラグビーキャリアは、若くしてその才能が開花したことから始まります。セント・ジョセフス・カレッジ在学中から頭角を現し、2004年から2006年にかけて、3年連続でラグビーオーストラリア高校代表（School Boys）に選ばれました。最終学年となる2006年には、そのリーダーシップを認められ、高校代表チームのキャプテンを務めています。彼のポテンシャルは、高校卒業を待たずにプロの世界へと彼を引き寄せました。スーパー12（現在のスーパーラグビー）の強豪ワラターズのトレーニングセッションには、わずか15歳という若さで参加しており、さらに17歳でオーストラリア代表「ワラビーズ」のトレーニングキャンプに招集されるなど、将来を嘱望されていました。

2007年、ビールはスーパー14（当時）のワラターズのトライアルマッチに出場し、シニアチームへの昇格を果たします。同年、オーストラリアA代表にも選ばれ、パシフィック・ネイションズカップで国際経験を積みました。この年、フランスで開催されたラグビーワールドカップの代表スコッド入りは惜しくも逃しましたが、国内での活躍は目覚ましいものがありました。2007年に一度だけ開催された国内プロリーグ、オーストラリア・ラグビー・チャンピオンシップ（ARC）では、ウェスタンシドニー・ラムズの一員としてプレー。チームは準決勝で敗退したものの、ビール自身は大会最多となるトライとトライアシストを記録し、「2007 ARC player of the tournament」に輝くなど、圧倒的なパフォーマンスを見せつけました。

世代別代表としても、2009年には20歳以下代表に選ばれています。そして同年、ついにフル代表であるワラビーズに初選出され、ウェールズ代表戦で記念すべきテストマッチデビューを果たしました。ワラビーズでの彼の存在感は年々増していき、特に2010年には、フィジー代表戦での2トライを皮切りに、年間（12テストマッチ）で歴代最多タイ記録となる7トライをマークするなど、チームの中心選手として活躍しました。

ビールのプロキャリアは、いくつかのチームを渡り歩くことになります。初期のワラターズでのプレーを経て、2011年にはレベルズに移籍。メルボルンを拠点とする新興チームで中心選手として活躍しました。しかし、2013年には再び慣れ親しんだワラターズへ復帰し、チームのスーパーラグビー優勝などに貢献しました。2016年には活躍の場を海外に移し、イングランド1部リーグ、プレミアシップのワスプスに加入。ヨーロッパのラグビーを経験した後、2018年に再度ワラターズへ戻ってきました。2020年には、フランスのトップリーグ、トップ14のラシン92に移籍し、ここでもその才能を発揮しました。そして、2023年シーズンからは三度、ワラターズへ復帰を果たしています。しかし、2024年には新たな挑戦として、同じオーストラリアのスーパーラグビーチーム、ウェスタン・フォースに加入しており、キャリアの晩年においても新たな環境でプレーを続けています。

カートリー・ビールは、その卓越したフットワーク、パススキル、そして判断力を活かしたランニングで相手ディフェンスを切り裂く能力に長けています。センター、フライハーフ、フルバックと、バックスラインの要となるポジション全てでハイレベルなプレーが可能であり、チーム戦術に応じて柔軟に役割を変えられる希少な存在です。また、プレースキックも担当することがあり、得点能力も高い選手です。アボリジニのルーツを持つラグビー選手としても注目され、多くの若手選手にとって模範となる存在と言えるでしょう。長きにわたり、オーストラリアラグビー界を牽引してきた彼のキャリアは、その才能とプロフェッショナリズムを示しています。

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