カート・エリング

カート・エリング

カート・エリング（Kurt Elling）は、1967年11月2日生まれのアメリカ合衆国のジャズ・ボーカリスト、作詞家、作曲家です。現代ジャズ・ボーカル界において最も重要な存在の一人として広く認識されています。

イリノイ州シカゴに生を受け、同州ロックフォードで育ちました。父親が聖歌隊の指導者であったことから、幼少期から音楽が身近にあり、コーラスをはじめ様々な楽器に触れる環境で育ちます。しかし、ジャズという音楽ジャンルに本格的に惹かれるようになったのは、大学進学後のことです。学業を続けながら、音楽への傾倒を深め、大学院へ進学後、卒業に必要な単位をわずかに残してジャズ・ボーカリストとしてのキャリアをスタートさせることを決意しました。

プロとしての活動初期は故郷シカゴを中心に精力的にライブを行い、その才能が注目を集めます。1990年代初頭には、ジャズの名門レーベルであるブルーノート・レコードと契約を結び、同レーベルから合計6枚のアルバムをリリースしました。その後、活躍の場をコンコード・レコードに移し、こちらも4枚の重要な作品を発表しています。

彼のキャリアにおける特筆すべき功績の一つは、グラミー賞受賞です。特に、伝説的なジャズ・シンガー、ジョニー・ハートマンとサックス奏者ジョン・コルトレーンに捧げたアルバム『デディケイテッド・トゥ・ユー〜カート・エリング・シングス・ザ・ミュージック・オブ・コルトレーン・アンド・ハートマン』がグラミー賞を受賞し、世界的な評価を不動のものとしました。これ以外にも、多くの作品がグラミー賞にノミネートされており、その実力と影響力の大きさを証明しています。

ボーカリストとしての彼の最大の特質は、その豊かな響きを持つ力強いバリトンボイスです。驚異的な4オクターブにも及ぶ広い音域を自在に操り、表現力豊かな歌唱を聴かせます。また、卓越したスキャット技術は彼のトレードマークの一つであり、楽器奏者にも劣らない即興的なアプローチで聴衆を魅了します。作詞家、作曲家としても活動しており、自身の作品に文学的な深みを与えることでも知られています。

これまでに数多くのリーダーアルバムをリリースするほか、様々な著名なミュージシャンの作品にもゲスト参加しています。主なリーダーアルバムには以下のようなものがあります。

『クローズ・ユア・アイズ』 (Close Your Eyes, 1995年)
『ザ・メッセンジャー』 (The Messenger, 1997年)
『ムーンライト・セレナーデ』 (Flirting with Twilight, 2001年)
『ナイトムーヴス』 (Nightmoves, 2007年)
『デディケイテッド・トゥ・ユー〜カート・エリング・シングス・ザ・ミュージック・オブ・コルトレーン・アンド・ハートマン』 (Dedicated to You: Kurt Elling Sings the Music of Coltrane and Hartman, 2009年) - グラミー賞受賞
『ザ・ゲイト』 (The Gate, 2011年)
* Secrets Are the Best Stories (2020年)

また、参加作品も多岐にわたり、ローレンス・ホブグッド、ボブ・ミンツァー、マンハッタン・トランスファー、イエロージャケッツ、ブラッド・メルドーといったジャズ界の巨匠たちとの共演から、日本の歌手である八代亜紀のアルバムへの参加まで、幅広い分野でその歌声を披露しています。

現代ジャズ・ボーカルシーンの第一線で活躍し続けるカート・エリングは、その唯一無二の歌声と音楽性で、世界中のジャズファンを魅了しています。

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