カーナーヴォン伯爵

カーナーヴォン伯爵：栄光と歴史を刻んだ三つの系譜

カーナーヴォン伯爵は、イギリス貴族の爵位の一つです。ウェールズの町カーナーヴォン（現在の綴りはCaernarfon）に由来するこの称号は、17世紀以降、三度にわたって異なる家系によって継承されてきました。それぞれの系譜は独自の物語を紡ぎ、イギリスの歴史に彩りを添えています。

第1期：ドーマー家の興亡

最初のカーナーヴォン伯爵位は、バッキンガムシャーの地主であったロバート・ドーマーに1628年に与えられました。彼は王党派としてイングランド内戦に参加し、戦死しました。伯爵位は息子のチャールズに継承されましたが、2代伯爵の死後、男子が絶え、爵位は消滅しました。

第2期：ブリッジズ家の華麗なる時代と終焉

18世紀初頭、新たなカーナーヴォン伯爵位が創設されました。これはシャンドス男爵位を保有していたブリッジズ家へと授けられたものです。この家系は初代カーナーヴォン伯爵のジェイムズ・ブリッジズのもとで、さらにシャンドス公爵位にも叙せられました。しかし、3代公爵の死後、男子が絶えたため、カーナーヴォン伯爵位を含む多くの爵位が断絶しました。

第3期：ハーバート家による現代への継承

現在のカーナーヴォン伯爵位は、1793年にヘンリー・ハーバートに与えられたもので、ハーバート家は以来、この爵位を継承し続けています。ハーバート家は政治家や考古学者など、多様な才能を持つ人物を輩出しました。特に注目すべきは、5代伯爵のジョージ・ハーバートです。彼はアマチュア考古学者として活躍し、ツタンカーメン王の墓発掘を支援したことで有名です。

初代カーナーヴォン伯爵であるヘンリー・ハーバートは、政治家として活躍した後、1793年にカーナーヴォン伯爵に叙せられました。その後も、彼の息子や孫たちも政治の世界で重要な役割を果たしました。4代伯爵ヘンリーは保守党の有力政治家で、植民地大臣としてカナダと南アフリカの自治領設立に尽力しました。

5代伯爵ジョージは考古学への情熱を注ぎ、ハワード・カーターを支援してツタンカーメン王の墓の発見に貢献しました。彼の貢献は、エジプト考古学の歴史に大きな足跡を残しました。

その後も、ハーバート家は伯爵位を継承し続け、現代に至っています。現当主である8代伯爵ジョージ・ハーバートは、ハイクレア城を拠点に、その歴史と伝統を受け継いでいます。ハイクレア城は、テレビドラマ『ダウントン・アビー』の撮影にも使用され、広く知られるようになりました。

カーナーヴォン伯爵家の系譜と遺産

三つの家系によって受け継がれてきたカーナーヴォン伯爵位は、イギリスの歴史、政治、そして考古学に深い足跡を残しました。王党派として戦ったドーマー家、華麗なるシャンドス公爵家として栄えたブリッジズ家、そしてツタンカーメン王の墓発掘に貢献したハーバート家。それぞれの系譜は、それぞれの時代を反映し、イギリス貴族の歴史における重要な一ページを飾っています。

現在、カーナーヴォン伯爵位はハーバート家が継承しており、その歴史と伝統は、現代においても大切に守られています。ハイクレア城は、その歴史を象徴する存在であり、イギリスの文化遺産として、これからも多くの人の心を捉え続けるでしょう。

参考文献

* 松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年。

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