カール・ゴルトマルク

カール・ゴルトマルク（Karl Goldmark, 1830年 5月18日 - 1915年 1月2日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したハンガリー出身の作曲家です。現在のハンガリーにあたるケストヘイに生まれ、ユダヤ系の家庭に育ちました。ハンガリー語ではゴルドマルク・カーロイ（Goldmark Károly）と呼ばれています。彼は主にオーストリアのウィーンを活動の中心とし、オペラ、管弦楽、室内楽、声楽曲など幅広い分野で作品を発表しました。

生涯と業績

ゴルトマルクは若い頃から音楽の才能を示し、ウィーンへと移り住んで本格的な音楽教育を受けました。彼の名は、弦楽四重奏曲変ロ長調作品8がウィーンで発表されたことにより、音楽界に広く知られるようになります。この初期の成功を足がかりに、彼は作曲家としての地位を確立していきました。

彼の作品の中で最もよく知られているのは、オペラ『サバの女王』作品27です。この作品は1875年にウィーンで初演され、批評家からも聴衆からも非常に好評をもって迎えられました。その人気は長く続き、ウィーン国立歌劇場の重要なレパートリーとして、1938年に至るまで頻繁に上演されました。生涯で合計7つのオペラを作曲しています。

オペラ以外では、ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調作品28が特に高く評価されており、今日でも演奏される機会が多い彼の代表作の一つです。また、交響曲第1番『田舎の婚礼』（Ländliche Hochzeit）作品26も人気のある作品です。この交響曲は一般的な4楽章構成ではなく、5つの楽章から成り立っています。それぞれの楽章には「婚礼の行進」、「宴の歌」、「セレナード」、「花嫁と花婿の庭での語らい」、「ダンス」という標題が付けられており、結婚式の情景を描写した組曲風の性格を持っています。

室内楽曲も数多く手掛けており、生前は批評家から高い評価を得ていましたが、残念ながら現在では演奏される機会は少なくなっています。弦楽五重奏曲イ短調作品9、ヴァイオリン・ソナタニ長調作品25、ピアノ五重奏曲変ロ長調作品30、チェロ・ソナタ作品39、そしてヴァイオリンとピアノのための2つの組曲（ニ長調作品11、変ホ長調作品43）などがあります。他にも、合唱曲や多数の演奏会用序曲を作曲しています。

交流と影響

ゴルトマルクは同時代の著名な音楽家たちとも交流がありました。作曲家ヨハネス・ブラームスは、ゴルトマルクの音楽、特にオペラや交響曲『田舎の婚礼』を高く評価し、自らオペラ作曲に挑戦しようとして断念した際に、「もし自分がオペラを書くとしたら、ゴルトマルクのようになるだろう」と語ったと伝えられています。

また、ゴルトマルクはリヒャルト・ワーグナーの音楽にも関心を持ち、ウィーンで最初のワグネリアン（ワーグナーの支持者）団体を設立した人物の一人でもあります。

作曲活動に加え、ゴルトマルクは教育者としても重要な役割を果たしました。ウィーン音楽院で管弦楽法の教授を務め、その門下からは多くの才能が輩出されました。特に、フィンランドの作曲家ジャン・シベリウスやオーストリアの作曲家フランツ・シュミットなどが彼のクラスで学びました。シュミットのオペラ『ノートルダム』には、ゴルトマルクからの影響が指摘されることもあります。

晩年には、同じくウィーンで活躍したリヒャルト・シュトラウスと共にイタリアで褒賞を受けています。

彼の甥にあたるルービン・ゴールドマーク（Rubin Goldmark, 1872-1936）もアメリカ合衆国で作曲家となりました。ルービンはニューヨークでアントニン・ドヴォルザークに作曲を学び、後に音楽教師としてアーロン・コープランドらを指導し、アメリカ音楽史において重要な役割を果たしました。

主な作品一覧

以下に、ゴルトマルクの主要な作品の一部を挙げます。

オペラ

サバの女王（Die Königin von Saba, 1875年）
マーリン（Merlin, 1886年）
炉端のコオロギ（Das Heimchen am Herd, 1896年）
Der Fremdling （1897年）
Die Kriegsgefangene （1899年）
ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン（Götz von Berlichingen, 1902年）
冬物語（Ein Wintermärchen, 1908年）

演奏会用序曲

シャクンタラー（Sakuntala ）op. 13
ペンテジレーア（Penthesilea ）op. 31
春に（Im Frühling ）op. 36
縛められたるプロメテウス（Der gefesselte Prometheus ）op. 38
サッフォー（Sappho ）op. 44
イタリアにて（In Italien ）op.49

主な合唱曲

無伴奏合唱のための『雨の歌』（Regenlied ）Op.10
春の網目（Frühlingsnetz ）Op.15
静かな海と楽しい航海（Meeresstille und glückliche Fahrt ）Op.16
春の讃歌（Frühlingshymne ）Op.23
詩篇第113番 Op.40

主なピアノ曲

疾風怒濤（Sturm und Drang ）Op.5
3つの小品（4手のための） Op.12
舞曲（4手のための） Op.22
2つのノヴェレッテ（Zwei Novelletten ）Op.29

もう一度検索