ガストアルバイター

ガストアルバイターとは

ガストアルバイター（独: Gastarbeiter）は、「ゲスト労働者」を意味するドイツ語で、他国から働きに来る外国人労働者を指します。特に、20世紀後半の西ヨーロッパにおいて、経済成長を支える労働力として重要な役割を果たしました。

概要

元々は「お客として招待された労働者」という意味合いで、ドイツに合法的に入国する労働者を指していました。しかし、グローバル化とヨーロッパ統合の進展とともに、国際的な労働力移動が活発化し、ガストアルバイターは、受け入れ国と送り出し国の間で締結された協定に基づいて保護される存在となりました。

しかし、制度と現実の間には大きな隔たりがあり、低賃金労働や不法入国といった問題も発生しています。

主な受け入れ国はドイツやフランスで、送り出し国はトルコやイタリアなどが挙げられます。

経済的影響

ガストアルバイターは、国際経済に大きな影響を与えました。

受け入れ国

受け入れ国では、労働力不足を補い、経済成長を促進する役割を果たしました。制度上は、同一労働同一賃金の原則が適用され、住居や社会保険も保障されることになっていました。高度な技術を持つ労働者の移入は、経済発展に大きく貢献しました。

送り出し国

一方、送り出し国では、熟練労働者の流出による経済発展の阻害が懸念されました。しかし、ガストアルバイターからの送金が、国内経済の原動力となる側面もありました。

ゲストワーカーとの比較

ガストアルバイターから派生した言葉に「ゲストワーカー」がありますが、特にアメリカのブラセロ計画において、異なる制度下での労働者を指す言葉として発展しました。ゲストワーカーは在留期間が限定され、低賃金での労働を強いられるケースが多く、「使い捨ての労働力」という側面が強調される傾向にありました。ガストアルバイターは協定により保護された労働者であるのに対し、ゲストワーカーは制度的な保護が不十分であったという点で、両者には大きな違いがあります。

社会問題

ガストアルバイターは、不法入国者の増加や、セグリゲーションといった社会問題を引き起こす要因にもなりました。不法入国者は制度の保護を受けられず、低賃金労働を強いられることがあります。また、収入格差による居住区の分離は、犯罪率の増加や衛生環境の悪化を招き、ガストアルバイターの生活を脅かすことにも繋がります。

まとめ

ガストアルバイターは、ヨーロッパの経済成長に貢献した一方で、様々な社会問題も引き起こしました。その制度と現実のギャップは、現代社会においても教訓とすべき点が多くあります。

参考文献

佐藤忍『国際労働力移動研究序説-ガストアルバイター時代の動態-』信山社出版、1994年。ISBN 4882615886。
田辺裕監訳『オックスフォード地理学辞典』朝倉書店、2003年。ISBN 4254163398。
村田晃「ドイツ・トルコ雇用双務協定締結期間におけるトルコ人ガストアルバイターについて」『研究報告集』第21号、獨協大学大学院外国語学研究科、2008年、NAID 40016095507。
山本健兒「ミュンヘンにおける「ガストアルバイター」住民の空間的セグリゲーション」『人文地理』第32巻第3号、人文地理学会、1980年、doi:10.4200/jjhg1948.32.214。
* 山本健兒「ドイツの都市内社会的空間的分極化は激化したか？：ドルトムント市の事例」『地理学評論』第82巻第1号、日本地理学会、2009年、doi:10.14866/ajg.2008s.0.22.0。

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