ガスパン州

太平洋に浮かぶ美しい島々からなるパラオ共和国には、独自の歴史と文化を持つ州が点在しています。その行政区画の一つに数えられるのが、ガスパン州（ガスパンしゅう、英語表記ではState of Ngatpang）です。かつて日本の文献などでは『瓦斯帆』と記されることもあったこの州は、パラオ最大の島であるバベルダオブ島の西部に位置しており、地理的に重要な一角を占めています。

ガスパン州は、陸地において複数の隣接州と境界を共有しています。具体的には、その北側にはアルモノグイ州が位置し、南側にはアイメリーク州およびアイライ州が広がっています。また、東側はエサール州と接しており、これらの州との地理的な関係は、州の自然環境や地域間の交流においても一定の影響を与えています。

パラオ共和国は合計16の州で構成されていますが、ガスパン州は地理的な広さにおいて、その中で5番目に位置する比較的大きな州です。限られた国土面積を持つパラオにおいて、この面積規模は州の持つ自然環境の多様性や土地利用の可能性を示唆していると言えるでしょう。

州の人口に関する直近のデータとしては、2015年に行われた国勢調査の結果が挙げられます。この調査によれば、ガスパン州に居住する人々の総数は282人でした。この数値は、パラオの他の州と比較しても人口が少ない方であり、州全体が比較的静かで豊かな自然に囲まれている様子を想像させます。州の行政の中心地として機能しているのは、Oikuul（オイクール）という名の集落であり、ここに州の主要な機関が集まっていると考えられます。

ガスパン州の歴史を振り返る上で、特筆すべき出来事の一つに、日本の江戸時代にさかのぼる日本人漂流者との関わりがあります。当時、不慮の海難事故などにより船が漂流し、遠く離れたパラオ諸島へとたどり着いた日本人たちがいました。その一部の人々が、このガスパンの地に一時的に身を寄せ、地元住民との間で交流を持ったという歴史的な記録が残されています。これは、鎖国政策をとっていた江戸時代の日本と、遥か南洋の島々との間に、図らずも生まれた人々の繋がりを示す貴重な史実として、ガスパン州の歴史における特異な一頁をなしています。

また、ガスパン州の自然の魅力として、訪れる人々を惹きつける存在があります。それが、美しいガスパンの滝です。バベルダオブ島の緑豊かな熱帯雨林の中に隠れるように存在するこの滝は、清涼な水を勢いよく落下させ、周囲の静かで神秘的な自然環境と一体となって、訪れる人々に深い安らぎと感動を与えてくれます。ガスパンの滝は、州の豊かな自然景観を象徴する存在であり、エコツーリズムの観点からも重要なスポットとなり得ます。

以上のように、ガスパン州はパラオ共和国の州として、地理的な位置、人口規模、面積、そして特有の歴史と自然景観において、多様な側面を持っています。この記述は、須藤健一氏が監修した『パラオ共和国 過去と現在そして21世紀へ』（おりじん書房、2003年）などの既存の情報に基づいています。

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