ガゼル (自動車)

GAZelle（ガゼル）

GAZelle（ガゼル、露: ГАЗе́ль）は、ロシアの自動車メーカーGAZ（ゴーリキー自動車工場）が製造・販売する小型商用車です。ソ連崩壊後の市場経済移行期に、需要の高かった小型商用車市場への参入を目指し開発されました。

歴史

開発の背景

ソ連崩壊後、ロシアの自動車メーカーは、フォード・トランジットやフォルクスワーゲン・T4に匹敵する需要の高い小型商用車を製造していませんでした。GAZは、この市場に注目し、1988年に独自設計・開発を開始しました。当初は、アゼルバイジャン共和国キロヴァバード市にある未稼働の車両工場での製造が計画されていましたが、ソ連崩壊後にプロジェクトは本格的に進展しました。

初代モデルの登場

GAZは、自社製の乗用車（特にGAZ-31029）とフロントグリルなどの部品を共有することでコストを削減し、1994年にガゼルを発売しました。エンジンは国産製品のみを搭載し、変速機はMTのみで、AT車はオプション設定されませんでした。前照灯は角型4灯式を採用。当初はトラックのみでしたが、1996年にはミニバス、1998年には小型のソボルが発売されました。

ソ連崩壊の影響と市場の独占

ソ連時代には、リガ自動車工場がソ連全土向けにミニバスを製造していましたが、ソ連崩壊に伴い、本社がラトビア共和国となり、ロシア市場は海外市場となりました。リガ自動車工場は、ロシア市場へ輸出車を販売し、外貨を獲得する必要が生じました。GAZは、この機会を逃さず、迅速に開発を進めました。その後もモデルチェンジは最小限に抑えられ、ソボルと共にロシア市場において小型バンおよび小型トラック市場を独占し、他のCIS諸国市場においても確固たる地位を築き、GAZ製品の中で最も成功を収め、人気製品となっています。

モデルチェンジ

1993年： 第2回モスクワ国際モーターショーで試作車を発表
1994年： 平ボディ車『GAZ-3302』の量産を開始
1999年： 全地形対応四輪駆動車の製造を開始
2003年： 2代目モデルへモデルチェンジ。ヘッドランプが異型2灯式となり、デザインを刷新
2005年： 累計製造台数100万台を記録
2010年： 3代目モデルへモデルチェンジ。車名がガゼル・ビジネスへ変更
2013年： 4代目モデルへモデルチェンジ。車名がガゼル・ネクストへ変更。大規模なモデルチェンジを実施

海外展開

ガゼルは、CIS諸国および中東欧のほか、モロッコやフィリピンなどのアジア市場およびアフリカ市場へ輸出されています。2018年には、アフリカ市場における事業拡大を目的として、アフリカ・モーターズとの協力により、モロッコ市場で販売を開始しました。

デザイン

初代ガゼルのデザインは、フォード・VE6型トランジットを彷彿とさせる面がありますが、両車に共通点はほとんどありません。ガゼルは、エンジン、トランスミッション、インテリアデザイン、ステアリング、ブレーキ類など、技術面で異なり、ロシア製エンジンのみを搭載しています。また、フロントシート、暖房と換気設備、ラジエーター、ダッシュボードも変更されており、ロシアの道路状況に適応するため、地上高を高く設定しています。

バリエーション

ガゼルには、様々なバリエーションが存在します。

GAZ-3302 - アオリ付平ボディ、3人乗りキャブ、後輪駆動モデル
GAZ-33021 - アオリ付平ボディ、GAZ-3302の改良モデル
GAZ-33023 - アオリ付平ボディ、全輪駆動モデル
GAZ-33027 - アオリ付平ボディ、6人乗りキングキャブ、後輪駆動モデル
GAZ-330237 - アオリ付平ボディ、キングキャブ、全輪駆動モデル
GAZ-3221 - ミニバス、8席、全輪駆動モデル
GAZ-32213 - ミニバス、13席、全輪駆動モデル
GAZ-322132 - ミニバス、マルシュルートカおよびシャトルバス用13席、全輪駆動モデル
GAZ-2705 - パネルバン、全輪駆動モデル
GAZ-27051 - 救急車、全輪駆動モデル
GAZ-27052 - パネルバン、キングキャブ、全輪駆動モデル
* GAZ-27057 - パネルバン、キングキャブ、全輪駆動モデル

車名の由来

車名の『ガゼル』は、ウシ科ブラックバック亜科の3属の総称に由来します。

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