ガリーナ・ヴィシネフスカヤ

ガリーナ・パーヴロヴナ・ヴィシネフスカヤ（1926年10月25日 - 2012年12月11日）は、ソビエト連邦出身のソプラノ歌手であり、その才能と波乱に満ちた生涯で広く知られています。夫は著名なチェロ奏者・指揮者のムスティスラフ・ロストロポーヴィチであり、音楽界における彼女の存在は非常に大きなものでした。

彼女は、ベンジャミン・ブリテン作曲の『戦争レクイエム』、そしてブリテンと親交の深かったドミートリイ・ショスタコーヴィチの『交響曲第14番』の初演時に、ソリストとして起用される予定でしたが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。

激動の時代を生き抜いた歌姫

1926年、ヴィシネフスカヤはレニングラード（現在のサンクトペテルブルク）で生まれました。第二次世界大戦中にはレニングラード封鎖を経験し、16歳という若さで防空部隊に身を投じました。戦火の中、彼女は類まれな歌唱力で人々を励まし、その才能を開花させていきました。

1952年、ヴィシネフスカヤはボリショイ劇場に入団し、その天性のソプラノで観客を魅了し、瞬く間に首席ソリストとしての地位を確立しました。ソ連人民芸術家の称号を得るなど、国民的な人気を博しました。

亡命、そして帰還

しかし、ヴィシネフスカヤの人生は順風満帆とはいきませんでした。彼女は、反体制運動を行っていた作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンを夫と共に支援したため、政府当局からの圧力を受けることになります。1974年、夫婦はアメリカ合衆国への亡命を余儀なくされ、ソビエト連邦の国籍を剥奪されました。

1990年、ミハイル・ゴルバチョフ政権下で名誉回復が認められ、ヴィシネフスカヤはソビエト連邦への帰国を果たしました。モスクワではオペラセンターを設立し、後進の育成に尽力するなど、その才能を社会に還元しました。晩年はパリとモスクワで過ごし、2012年12月11日、モスクワで86年の生涯を閉じました。

後世への影響

ヴィシネフスカヤの功績は音楽界に深く刻まれています。彼女の歌声は多くの人々に感動を与え、その芸術性は後世に受け継がれています。2013年には、アエロフロート・ロシア航空が受領したエアバスA321型機に「ガリーナ・ヴィシヌフスカヤ」という愛称が付けられました。

著書に自伝『ガリーナ自伝―ロシア物語』（和田旦訳、みすず書房、1987年）があり、これは34ヶ国語に翻訳され、世界中で読まれています。

彼女の音楽は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

関連項目として、ヴィシネフスカヤに師事した小山由美、マスタークラスを受講した天童大人が挙げられます。

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