ガルティーモア

ガルティーモア：英国クラシック三冠馬の栄光と波乱の生涯

ガルティーモア(Galtee More, 1894-1917)は、アイルランドで生まれ、イギリスで活躍したサラブレッド競走馬にして種牡馬です。1897年、2000ギニーステークス、ダービーステークス、セントレジャーステークスと、英国クラシック三冠を制覇するという偉業を成し遂げました。これは、史上7頭目という快挙でした。

出自と育成

ガルティーモアは、アイルランドのリムリック県ブルリーにあるノッカニースタッドで、ジョン・ガビンズによって生産されました。鹿毛のサラブレッドで、堂々とした体格と優れた体躯を持ち、「ほぼ完璧な出来栄え」と評されたほどです。

父はケンダル。2歳時にジュライステークスを制しましたが、故障のため引退しました。しかし、種牡馬としてイギリスとアルゼンチンで成功を収め、ガルティーモアの活躍により1897年にはイギリスのリーディングサイアーに輝きました。母モルガネットは競走馬としては目立った成績を残しませんでしたが、優れた繁殖牝馬であり、後にダービーステークス優勝馬アードパトリックを出産しています。ガルティーモアの馬名は、リムリック県とティペラリー県の境界にあるガルティーモア山に由来しています。

イギリスに送られたガルティーモアは、ウィルトシャー・ベックハンプトンでサム・ダーリン調教師の管理下に置かれました。三冠レースでは、1887年の首位騎手チャールズ・ウッドが騎乗しました。ウッドは物議を醸す人物でもあり、ガルティーモアへの騎乗以前には9年間の追放処分を受けていた経歴を持っていました。しかし、ガルティーモアとの三冠制覇によってその汚名返上を果たすこととなります。ダービー制覇の秘訣を問われたウッドは、「鞍、手綱、そして良い馬」と答えたという逸話も残っています。

輝かしい競走成績

2歳時(1896年)

ガルティーモアのデビュー戦は、ストックブリッジ競馬場のハーストボーンステークスでした。1番人気ミンストレルを破り、見事勝利を収めます。続くランカシャーブリーダーズステークスでは、斤量差の影響もあり敗れましたが、その後はモールコームステークス、ロウスプレートと勝利を重ねます。そして、2歳時の最重要レースであるミドルパークプレートでは、無敗の強豪ヴェラスケスとの対戦となりました。このレースは、翌年のクラシックでの有力候補同士の対決として注目を集め、ガルティーモアはヴェラスケスを6馬身差で破り、大きなインパクトを与えました。2歳時は4382ポンドの賞金を獲得し、翌年のダービーではヴェラスケスと並んで1番人気に支持されました。

3歳時(1897年)

2000ギニーステークスでは、良馬場の中ヴェラスケスとの再戦。ガルティーモアは1番人気に応え、4馬身差で勝利します。高額な購入オファーをことごとく断り続けるガビンズの執念も光ります。続くニューマーケットステークスも圧勝。ダービーステークスでは、単勝オッズ1.25倍という圧倒的な支持を受け、2馬身差で勝利しました。アイルランドでは、ガルティーモアのダービー制覇を祝う熱狂的な祝祭が行われました。プリンスオブウェールズステークス、サンドリンガムゴールドカップと勝利を重ねます。

セントレジャーステークスでは、4頭立てのレースで、僅差ながら勝利し、三冠を達成しました。その後、ケンブリッジシャーハンデキャップに出走しますが、斤量差の影響もあり10着に終わります。この年の賞金総額は2万2637ポンドに上り、年間最高賞金獲得馬となりました。年末にはロシア政府に高額で売却され、ロシアへと旅立ちました。

種牡馬としての成功と最期

ロシア、ハンガリー、ポーランドで多くの優秀な競走馬を輩出し、種牡馬としても成功を収めました。その後、ドイツに移り、1910年にはドイツのリーディングサイアーとなりました。1917年1月30日、23歳で搬送中に負傷し、安楽死となりました。

ガルティーモアは、類まれな才能と波乱に満ちた生涯を送った競走馬でした。その輝かしい功績は、今もなお語り継がれています。

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