ガレージ・インク

メタリカが1998年に発表したカバーアルバム『ガレージ・インク』は、彼らの音楽的なルーツを辿り、新たな魅力を発掘する意欲的な作品です。2枚組CDとしてリリースされ、ディスク1には新録音されたカバー曲、ディスク2には過去に発表されたカバー曲が収録されています。

このアルバムには、メタリカに多大な影響を与えたバンド、ダイアモンド・ヘッドの「イッツ・エレクトリック」のカバーが収録されています。オリジナル版の作者であるブライアン・タトラーによると、メタリカは1982年のリハーサルですでにこの曲を演奏しており、当時ラーズ・ウルリッヒからテープが送られたとのことです。また、ブラック・サバスの「サブラ・カダブラ」のカバーでは、「ナショナル・アクロバット」の断片が挿入されています。ブルー・オイスター・カルトの「アストロノミー」のカバーは、同バンドのベーシストだったジョー・ブーチャードに影響を与え、彼は当時出版業界で働いていましたが、このカバーをきっかけに音楽活動を再開しました。

レーナード・スキナードのカバー「チューズデイズ・ゴーン」は、オリジナル・メンバーのゲイリー・ロッシントンを含む多数のゲストを迎えたアコースティック・スタジオ・ライブで録音されました。この音源は、ラジオ番組「Don't Call Us, We'll Call You」のために1997年12月18日に収録されたものです。

アルバム・タイトルは、『メタル・マスター』（1986年）収録曲「Damage, Inc.」と、当時廃盤となっていたEP『The $5.98 E.P.: Garage Days Re-Revisited』（1987年）のセルフパロディです。また、本作にはEP『メタル・ガレージ』からの全曲も収録されています。

『ガレージ・インク』は、アメリカのBillboard 200で初登場2位を獲得し、ガース・ブルックスの『ダブル・ライヴ』に1位を阻まれました。しかし、収録曲「ウィスキー・イン・ザ・ジャー」は、第42回グラミー賞で最優秀ハードロック・パフォーマンス賞を受賞しました。ドイツのアルバム・チャートでは初登場1位となり、43週連続でトップ100入りするなど、世界中で高い評価を得ました。

オールミュージックのStephen Thomas Erlewineは、このアルバムに5点満点中4点を付け、「初期のメタリカほど生々しくはないが、『ロード』および『リロード』よりは聴く価値がある」と評しました。『CDジャーナル』のミニ・レビューでは、「全体的にリラックスした雰囲気が感じられるのは、前作、前々作で新たな方向性に挑んだ彼らが、次のステップへ進む前に肩ならしをしておきたかったからに違いない」と評されています。

『ガレージ・インク』は、メタリカのルーツミュージックへの愛情と、カバー曲を通して新たな音楽性を追求する姿勢が感じられる作品です。彼らの音楽的な幅広さを示すとともに、ファンにとっては必聴のアルバムと言えるでしょう。

収録曲

ディスク1
(収録曲名は省略)

ディスク2
Garage Days Re-Revisited '87
Garage Days Revisited '84
B-Sides & One-Offs '88-'91
Motorheadache '95

参加ミュージシャン

ジェイムズ・ヘットフィールド - ボーカル、リズムギター
カーク・ハメット - リードギター
ジェイソン・ニューステッド - ベース
クリフ・バートン - ベース(on Disc 2 - #6, #7)
ラーズ・ウルリッヒ - ドラムス
下記ミュージシャンは「チューズデイズ・ゴーン」にゲスト参加。
ジェリー・カントレル、ペッパー・キーナン、ジム・マーティン、ゲイリー・ロッシントン - ギター
ショーン・キニー - ドラムス
レス・クレイプール - バンジョー
* ジョン・ポッパー - ハーモニカ

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