新ウィーン楽派

新ウィーン楽派（しんウィーンがくは、独: Zweite Wiener Schule または Neue Wiener Schule, 英: Second Viennese School）は、20世紀初頭、主に1900年代初頭にかけてウィーンで活動した作曲家たちの集団を指します。この楽派は、従来の調性音楽を離れ、無調音楽や十二音技法といった革新的な音楽語法を追求したことで、クラシック音楽の歴史において重要な転換点となりました。

主要な作曲家たち

新ウィーン楽派の中心人物として知られるのは、以下の3名です。

アルノルト・シェーンベルク (1874年 - 1951年): 楽派の創始者であり、指導者的な存在です。無調音楽と十二音技法の創始者として、後世の音楽に多大な影響を与えました。
アントン・ヴェーベルン (1883年 - 1945年): シェーンベルクの弟子であり、その音楽は極限まで凝縮された表現が特徴です。十二音技法を徹底的に追求し、点描主義的な作風を確立しました。
アルバン・ベルク (1885年 - 1935年): 同じくシェーンベルクの弟子であり、ヴェーベルンとは対照的に、ロマンティックな要素を色濃く残した作風が特徴です。オペラ『ヴォツェック』や『ルル』などの作品で知られています。

これらの3人は、師弟関係にあり、互いに影響を与えながら、新しい音楽の可能性を切り開きました。彼らの音楽は、当時の音楽界において最も前衛的な立場にあり、美術家のワシリー・カンディンスキーや哲学思想家のテオドール・アドルノなど、他の分野の芸術家や思想家とも交流を持ちました。

その他の作曲家たち

新ウィーン楽派は、上記の3名だけでなく、以下のような作曲家たちも関わっています。

アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー: シェーンベルクの唯一の正式な師であり、義兄でもあります。初期のシェーンベルクに大きな影響を与えました。
エゴン・ヴェレス：新ウィーン楽派の初期メンバーの一人。
ハンス・アイスラー: 新ウィーン楽派の出身ですが、後に独自の道を歩みました。政治的なメッセージを込めた音楽を多く作曲しました。
ハンス・イェリネク: 新ウィーン楽派の作曲家として活動。
ハンス・エーリッヒ・アポステル: ヴェーベルンの弟子で、新ウィーン楽派の作曲家として活動。
ヴィクトル・ウルマン: ナチスによって強制収容所に送られましたが、収容所内でも作曲活動を続けました。
ヨーゼフ・マティアス・ハウアー: シェーンベルクよりも2年ほど前に、独自の十二音技法（トローペ）を開発しました。
カールハインツ・スッセル: 無調音楽と十二音音楽の作曲家。
ニコラウス・フィドルフ: 無調音楽と十二音音楽の作曲家。
ルネ・レイボヴィッツ: シェーンベルクの音楽理論を研究し、普及に努めました。
ロベルト・ジェラール: カタルーニャ出身で、新ウィーン楽派に影響を受けた作曲家。
ノルベルト・フォン・ハンネンハイム: オーストリア出身の作曲家。
ニコス・スカルコッタス: ギリシャ出身で、新ウィーン楽派に影響を受けた作曲家。

新ウィーン楽派の音楽的特徴

新ウィーン楽派の音楽は、以下の特徴を持つとされています。

無調音楽: 従来の調性音楽の枠組みを離れ、中心となる音を持たない音楽です。これにより、不協和音や不安定な響きが多用され、感情的な緊張感や不安感が表現されました。
十二音技法: 1オクターブの中にある12の音を、特定の順序で並べた音列（セリー）を基本とする作曲技法です。これにより、音楽の組織的な統一性が図られ、無調音楽における形式的な問題を解決する試みとなりました。