ガーデン・ツーリズム

ガーデンツーリズム：庭園と植物園をめぐる旅

ガーデンツーリズムは、歴史的に意義深い庭園や、植物学的に重要な植物園などを巡る観光です。近年、世界中で人気が高まっており、多くの旅行者が美しい景観や豊かな自然に触れるため、国内外各地の庭園を訪れています。個人旅行やツアー旅行など、さまざまなスタイルで楽しむことができます。

ガーデンツーリズムの広がり

ガーデンツーリズムの目的地は多岐に渡ります。海外では、スペインのアルハンブラ宮殿やインドのタージマハルなど、歴史的建造物と一体となった庭園が人気です。また、アメリカ合衆国のロングウッド庭園やフィロリ荘庭園、イギリスのシシングハースト・カースル・ガーデン、イタリアのティヴォリのエステ家別荘など、それぞれの地域や文化を反映した個性豊かな庭園が数多く存在します。オランダのキューケンホフ公園、フランスのヴェルサイユ宮殿やジヴェルニーのモネの庭なども、世界中から多くの観光客を集めています。日本においては、龍安寺など、伝統的な枯山水庭園が人気の観光スポットとなっています。

2000年の統計では、アルハンブラ宮殿とタージマハルにはそれぞれ200万人以上の観光客が訪れており、その人気ぶりが伺えます。これらの人気スポットでは、観光客の増加に対応するためのランドスケープ・コンサルタントの需要も高まっています。

ガーデンツーリズムの歴史：イギリスにおけるナショナル・ガーデン・スキーム

現代的なガーデンツーリズムの原型は、イギリスで発展しました。イギリスでは、個人所有の庭園や普段非公開の庭園を公開する「オープンガーデン」の文化が根付いており、その歴史は古く、1931年に発行された『イギリスとウェールズの公開庭園と募金』（通称「イエローブック」）は、その歴史を象徴するガイドブックです。

この「イエローブック」は、イギリスの雑誌「カントリーライフ」が発行したもので、ナショナル・ガーデンズ・スキームという取り組みを紹介しています。ナショナル・ガーデンズ・スキームは、19世紀後半に設立された地域看護協会が、資金調達のために始めた取り組みで、庭の所有者が自らの庭園を公開し、入場料を協会に寄付するというものです。このスキームは、地域社会への貢献と、庭園文化の普及という二つの目的を同時に達成するものでした。

第二次世界大戦後、ナショナル・ガーデンズ・スキームはナショナルトラスト運動と連携し、より大規模な事業へと発展しました。トラストが保全を進めている歴史的な庭園が公開されるようになり、見学者の数は大幅に増加しました。現在も、多くの庭園がオープンガーデンとして公開され、その数は3700カ所を超えています。2015年には、「イエローブック」は「Gardens To Visit」と改名されました。

ガーデンツーリズムの記録：初期の旅行記

庭園めぐりを記録に残した初期の旅行記としては、16世紀から17世紀にかけて活躍した旅行者たちの記録があります。例えば、ミシェル・ド・モンテーニュは1580年から1581年にかけてヨーロッパ各地を旅行し、その旅日記には庭園に関する記述も含まれています。また、ファインズ・モリソンは1590年代にヨーロッパ各地を旅行し、その記録は歴史学的に貴重な資料となっています。さらに、イギリスの作家で造園家でもあったジョン・イーヴリンは、17世紀に林業や庭園に関する著作を残しています。これらの記録は、初期のガーデンツーリズムの様子を知る上で貴重な資料となっています。

日本のガーデンツーリズム

日本では、ガーデニングブームを背景に、フラワー・ツーリズムや庭園めぐりといった新しいタイプのツーリズムが発展しています。国際ガーデンツーリズム協会 (IGTN) は、日本の先進的な取り組みとして、北海道のガーデンツーリズム事業を高く評価しています。また、イギリスのナショナル・ガーデンズ・スキームを参考に、オープンガーデン活動が盛んに行われ、日本のガーデンツーリズムを支えています。

国土交通省は、訪日外国人旅行客の増加を目指し、ガーデンツーリズムに着目し、2019年に「庭園間交流連携促進計画（ガーデンツーリズム）登録制度」を制定しました。この制度は、地域活性化に貢献する庭園を認定するもので、多くの自治体や施設が登録しています。北海道ガーデン街道、いばらきガーデン＆オーチャードツーリズム、むさしの・ガーデン紀行など、多くの地域がガーデンツーリズムを推進しています。

このように、ガーデンツーリズムは、歴史、文化、自然を同時に楽しめる魅力的な観光形態であり、今後もますます発展していくことが期待されます。

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