ガールズ (日本のバンド)

ガールズ（GIRLS）

ガールズは、1970年代後半の日本の音楽シーンにおいて、女性ロックバンドの先駆者として評価されるグループです。その活動期間はわずか二年と短いながらも、後進の女性ミュージシャンたちに大きな影響を与えました。特に、後に人気バンド、ジューシィ・フルーツのギタリストとして活躍するイリアこと奥野敦子が在籍していたことでも知られています。

概要と背景

ガールズは、前身バンド「サティン・オデッセイ」を母体として、1977年に結成されました。結成当初は、メンバーのうち三人が現役高校生でした。当時の日本の音楽界では女性のみで構成される本格的なロックバンドは極めて珍しく、その登場は大きな注目を集めました。

1970年代後半、世界的にパンクムーブメントが席巻しており、ガールズもその影響を受けていました。1977年2月、彼らはファーストアルバム『野良猫』でデビューを飾ります。この時期、海外では女性だけのロックバンド、ザ・ランナウェイズが人気を博しており、ガールズはしばしばランナウェイズと比較されつつ注目を集めました。

その音楽性と存在感は国内にとどまらず、デビュー当初からアメリカやイギリスの音楽関係者、DJ、ジャーナリストからも関心を持たれ、「ランナウェイズに続く有望な新人バンド」として評されています。また、日本でリリースされた最初の二枚のアルバムから選曲された編集盤『ザ・ガールズ』が全ヨーロッパで発売されるなど、国際的な広がりも見せました。

メンバーと音楽性

バンドは、ヴォーカルのリタ（野元貴子）、リードギターのイリア（奥野敦子）、サイドギターのレナ（井戸一江）、ベースのジルが脱退しジニー（立岡安佐美）へ交代、ドラムスのサディー（坂野修子）という5人編成でした。興味深いのは、各メンバーのニックネームであるジル（後にジニー）、イリア、リタ、レナ、サディーの頭文字を並べると「G.I.R.L.S.」となる点です。

オリジナル楽曲を中心に活動しましたが、当時影響を受けたザ・ランナウェイズの『チェリー・ボンブ』やラモーンズの『シーナはパンク・ロッカー』といったパンク・ロックの代表的なナンバーも積極的にカバーしていました。

当時の「女の子バンド」と影響力

当時の日本の音楽シーンにおいて、「女の子バンド」は、実力よりも珍しさやルックスといった興味本位な見方をされがちでした。リードギターのイリアはインタビューで、男性バンドに比べてパワー面での苦労（例えば重いPA機材の運搬など）や、観客からの見られ方の違いに言及しています。しかし同時に、彼女たちは「お色気」に頼るのではなく、あくまで音楽で勝負したいという強い意志を持っていました。

ガールズの登場は、日本の女性がロックの世界に参加する大きなきっかけとなりました。彼女たちがメディアに登場し、本格的なロックサウンドを鳴らしたことで、「自分にもできるかもしれない」と触発された女性たちが数多く現れ、いわゆる「ガールズバンド」がどっと増加しました。街中でエレキギターを担いで歩く女性が増えたのも、ガールズが示した可能性があったからです。

イリアは、自分たちの活動が後続の女性たちに勇気を与えたことについて推測しつつも、当時の「女の子バンド」の多くが似たようなスタイルや選曲に留まっている現状にも触れています。彼女は、今後さらに多様な個性を持つバンドが登場し、性別ではなく音楽そのもので正当に評価されるようになることで、世間の「女の子バンド」に対する見方も変わるだろうと期待を述べていました。

解散とその後の活動、再評価

短い活動期間ではありましたが、ガールズは3枚のシングルと、後述する3枚のアルバムを発表した後、1979年に解散しました。

解散後も、メンバーはそれぞれの道を歩み続けました。ギタリストのイリアは、近田春夫&BEEFを経て、ニュー・ウェーブバンドとして人気を博したジューシィ・フルーツへ加入。ヴォーカルのリタはピンナップスからゲートボールへ、ベーシストのジニーはジャングルズに参加するなど、引き続き音楽シーンで活動を展開しました。

時代を経て、ガールズの先駆者としての功績は再評価されました。2007年には、過去のオリジナルアルバムが紙ジャケット仕様で復刻発売され、再び多くの音楽ファンの注目を集めました。

ディスコグラフィ

アルバム

野良猫 （1977年）
パンキー・キッス （1977年）
グリース（1979年）
※映画『グリース』のサウンドトラックのカバーアルバムという珍しい企画盤。ロックバンド「スロッグ」との共演。

シングル

野良猫 （1977年）
パンキー・ハイスクール・ラブ
* ラブ・ジャック

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