キクタニギク

キクタニギク（学名: Chrysanthemum seticuspe）は、キク科キク属に分類される多年草です。別名としてアワコガネギク、アブラギク、カモメギクなどがあります。この植物は、山麓の日当たりの良い草地に自生する、いわゆる野菊の一種です。

分布

キクタニギクは、日本国内では岩手県から関東地方の太平洋岸地域、長野県、近畿地方、そして九州北部にかけて分布しています。国外では、中国北部から東北部、朝鮮半島にも見られます。近年では、中国や韓国由来の種子を用いた法面緑化により、外来種としても日本各地に定着しています。

特徴

キクタニギクは、山地の谷間のやや乾いた崖や、山麓の土手などに生える多年草です。茎は叢生し、高さは通常30～60cm程度で、盛んに枝分かれします。茎は細く、しばしば斜めに伸びます。葉は互生し、長卵形で深く五裂します。栽培菊に似ていますが、切れ込みがより細かく、葉質は薄いです。葉の両面には細い毛があり、少し黄色味を帯びた緑色で、つやはありません。

花期は秋で、10月から11月頃に開花します。茎の先端に、鮮やかな黄色の1cm足らずの頭花を多数つけます。舌状花は短く多数、中心の筒状花も多いのが特徴です。果実（そう果）には冠毛がありません。

2019年には、日本の研究チームによってキクタニギクのゲノム（全遺伝情報）が解読され、栽培菊の品種改良への応用が期待されています。

食用

キクタニギクは食用としても利用できます。花をつけた茎の頂部を5～10cmほど摘み取り、天ぷらなどにして食べることができます。加熱調理しても花の色は変わらず、爽やかな香りとほどよい苦みが楽しめます。春の芽生えや夏場の葉も、天ぷらや油炒めにして食べることができます。葉は少し苦みが強く、シュンギクのような風味がありますが、シュンギクのようなアクはありません。ただし、若い葉でも繊維が強く、揚げると時間が経つと硬くなってしまうため、花ごと刻んでかき揚げ風にすると、時間が経っても美味しく食べられます。

参考文献

吉村衞『おいしく食べる山野草』主婦と生活社、2007年4月23日、124頁。ISBN 978-4-391-13415-5。
林弥栄『山渓カラー名鑑・日本の野草』山と渓谷社、1983年、73頁。ISBN 4-635-09016-7。

関連項目

キク
キク属

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