キケマン属

キケマン属（Corydalis）について

キケマン属（学名：Corydalis）は、ケシ科ケマンソウ亜科に分類される植物の属の一つです。新エングラー体系ではケシ科、クロンキスト体系ではケマンソウ科とされていました。この属には、世界中に400種以上もの植物が含まれており、特にユーラシア大陸、中でも中国に多く分布しています。日本では、約20種が確認されており、多様な種が存在します。

キケマン属の特徴

キケマン属の植物は、多年草、一年草、または越年草として生育します。地下茎を持つものもあり、植物全体が粉白色を帯びることがあります。茎や葉を切ると出る汁液は無色です。葉は根元から生えるか、茎に互い違いに生えます。葉は柔らかく、3出複葉または羽状複葉という形をしています。

花は、茎の先端に総状花序として咲くか、葉に対生して咲きます。花は両性花で、小さな花柄と苞を持っています。花弁は4枚で、外側に2枚、内側に2枚あります。外側の上の花弁には距（きょ）または胞（ほう）と呼ばれる突起があり、下側の花弁よりも長くなっています。内側の左右の花弁はやや小さく、先端で合着しています。雄しべは2本です。果実は蒴果（さくか）で、熟すと2つに裂けます。

日本に分布する主な種

日本には、以下のようなキケマン属の種が分布しています。

エゾエンゴサク (Corydalis fumariifolia subsp. azurea)
ヤマエンゴサク (Corydalis lineariloba)
ヒメエンゴサク (Corydalis lineariloba var. capillaris)
キンキエンゴサク (Corydalis papilligera)
ミチノクエンゴサク (Corydalis orthoceras)
ジロボウエンゴサク (Corydalis decumbens)
シロバナジロボウエンゴサク (Corydalis decumbens f. albescens)
エゾオオケマン (Corydalis curvicalcarata)
ムラサキケマン (Corydalis incisa)
シナノサラサケマン (Corydalis incisa f. bicolor)
ユキヤブケマン (Corydalis incisa f. candida)
シロヤブケマン (Corydalis incisa f. pallescens)
ツルケマン (Corydalis ochotensis)
ナガミノツルケマン (Corydalis raddeana)
ヤマキケマン (Corydalis ophiocarpa)
ホザキキケマン (Corydalis racemosa)
シマキケマン (Corydalis balansae)
エゾキケマン (Corydalis speciosa)
フウロケマン (Corydalis pallida var. pallida)
ミヤマキケマン (Corydalis pallida var. tenuis)
ツクシキケマン (Corydalis heterocarpa var. heterocarpa)
キケマン (Corydalis heterocarpa var. japonica)
ムニンキケマン (Corydalis heterocarpa var. brachystyla)
ナンゴクキケマン (Corydalis heterocarpa var. koidzumiana)
オトメエンゴサク (Corydalis fukuharae)
チドリケマン (Corydalis kushiroensis)

これらの種は、それぞれ異なる特徴を持ち、日本の様々な地域で見ることができます。

園芸種としてのキケマン属

キケマン属の植物は、園芸種としても人気があります。特に、以下の種がよく栽培されています。

エゾエンゴサク (Corydalis ambigua): 日本産の種で、山野草として愛好家に親しまれています。
ヒマラヤエンゴサク (Corydalis flexuosa): 中国四川省原産で、美しい花色が特徴です。流通上は、品種名で呼ばれることが多くあります。
'Pere David'（ペールダヴィッド）：紫がかったグラデーションの花を咲かせます。
'Purple Leaf'（パープルリーフ）：葉が黒みがかる品種です。
'Blue Panda'（ブルーパンダ）：スカイブルーの花が特徴的です。
'China Blue'（チャイナブルー）：透き通るような青色の花が美しい品種です。
コリダリス・ソリダ (Corydalis solida): ヨーロッパ原産の種で、園芸用として最も普及しています。
'Dieter Schacht'（ディーターシャハト）：明るいピンク色の花を咲かせます。
'George Baker'（ジョージベイカー）：赤に近い濃いピンク色の花が特徴です。
'Transylvanica'（トランシルヴァニカ）：赤みが強い赤紫色の花を咲かせます。

これらの園芸品種は、花の色や葉の色、形など、様々なバリエーションがあり、ガーデニングを楽しむ人々に人気があります。コリダリスの名前で流通していることも多く、園芸店などで手軽に入手することができます。

関連項目

華鬘（けまん）
延胡索（えんごさく）

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本Ⅱ離弁花類』、1982年、平凡社
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名－学名インデックス」（YList）
* 大場秀章編著『植物分類表（初版第3刷訂正入）』、2011年、アボック社

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