新エングラー体系

新エングラー体系

新エングラー体系（しんエングラーたいけい）は、1953年および1964年にハンス・メルヒオールたちによって提案された、植物の分類体系です。この体系は、アドルフ・エングラーが1883年にアウグスト・アイヒラーによって発表された分類法を基盤にしており、植物の進化と多様性を反映しています。

背景

アドルフ・エングラーは、1892年に発表した『植物分科提要』で、彼自身の名を冠したエングラー体系を構築しました。これは、1936年までに改訂を重ね、多くの植物の分類を行う土台となりました。エングラー体系は、進化は単純な形態から複雑な形態へと進むという考え方に基づいており、植物を隠花植物と顕花植物に分類し、さらに顕花植物を裸子植物と被子植物へ細分化しています。

エングラーは、植物を進化の観点から解析し、より原始的と考えられる種を前面に位置付け、分類に一貫性を持たせました。

新エングラー体系の登場

1953年と1964年にメルヒオールらが発表した新エングラー体系は、エングラー体系を元にしつつも、その分類法を見直し、進化に基づく新たな配置を提案しました。特に、裸子植物や被子植物に対する分類が再構築され、より論理的な階層が設けられました。

具体的には、無花被花と単花被花を両花被花よりも原始的であるとし、離弁花類は合弁花類よりも先に進化したと認識されています。こうした見直しが、新エングラー体系の特徴を形成しています。

日本への影響

この新エングラー体系は、伊藤洋の『新高等植物分類表』などによって日本に紹介されました。日本では、植物分類法において非常に広く受け入れられ、さまざまな学術書や植物図鑑で利用されています。例えば、朝日新聞社による『週刊朝日百科. 世界の植物』や、佐竹義輔の『日本の野生植物』では、この体系に基づいた分類が行われています。

国際的な位置付け

新エングラー体系は、イギリス及びその植民地を除く世界各国で広まったものの、日本国外ではアメリカや中国においてはクロンキスト体系が主流とされています。新エングラー体系が、日本国内で非常に有用であるとされたことは、実用性と包括的な分類をあげた森田の評価にも表れています。

現状と変遷

ただし、最近では分子系統解析に基づくAPG体系が提唱され、その結果、新エングラー体系は学問的に古典的な存在となりつつあります。実際、日本の国立科学博物館では変更が行われ、より現代的な分類体系への移行が進められています。

まとめ

新エングラー体系は、植物の多様性を分かりやすく分類した重要な体系であり、長年に渡って植物分類におけるスタンダードとして機能してきました。これほど多くの植物に適用されてきた背景には、それが持つ合理性と包括性があると評価されています。進化に基づく明確で一貫した体系は、今後も植物の研究や教育において重要な役割を果たし続けることでしょう。

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