キッド・ガラハド

キッド・ガラハド（Kid Galahad）は、1990年 3月3日に中東のカタール・ドーハで生を受けたイギリスのプロボクサーです。本名をアブドゥル・バリー・アワドといい、イエメン系の両親のもとに生まれました。彼の父親はカタール軍に所属していましたが、湾岸戦争終結後に解放された後、幼いガラハドは家族と共にイングランドへと移住。最初はリヴァプールで過ごし、12歳の時にシェフィールドへ引っ越しました。

彼のボクシングキャリアは13歳で始まります。転機となったのは、モスクでの偶然の出会いでした。当時の彼が憧れていた伝説的な世界チャンピオン、ナジーム・ハメドに遭遇し、「世界王者になりたい」という夢を語ったところ、ハメド本人から彼のトレーナーであったブレンダン・イングルのジムへ行くことを直接勧められました。イングル氏はその才能を見抜き、1962年のエルヴィス・プレスリー主演映画にちなんで「キッド・ガラハド」というリングネームを与えました。

2009年9月5日、ガラハドはワトフォードでバンタム級としてプロデビューを飾りました。最初の試合を判定で勝利し、キャリアをスタートさせます。その後、階級をスーパーバンタム級に上げ、着実に勝利を重ねていきました。

- 2012年2月18日、ジェイソン・ブースに判定勝ちし、WBCインターナショナルスーパーバンタム級王座を獲得。
- 同年5月12日には、ジョシュ・ウェイルを相手に初防衛に成功しました。
- 2013年9月14日、ジェームズ・ディケンズにTKO勝ちを収め、BBBofC英国スーパーバンタム級王座を獲得。
- 2014年にはさらに躍進し、同年3月22日にセルヒオ・プラドとの対戦でEBUスーパーバンタム級王座を、5月10日にはフレッド・ムンドレイビーとの対戦でコモンウェルスイギリス連邦スーパーバンタム級王座を、9月20日にはアデイルソン・ドス・サントスとの対戦でIBF世界スーパーバンタム級ユース王座をそれぞれ獲得。この時期、彼はスーパーバンタム級の主要な地域タイトルをほぼ制覇する勢いでした。

順風満帆に見えたキャリアに影を落としたのが、2015年5月に発覚した薬物問題です。ドーピング検査で禁止薬物であるアナボリックステロイドの一種、スタノゾロールが検出され、イギリスアンチ・ドーピング機関（UKAD）から2年間の資格停止処分を受けました。ガラハド本人は、兄弟間のトラブルにより兄が自分のプロテインシェーカーに薬物を混入させたと主張し、兄もその事実を認めましたが、UKADは処分を撤回しませんでした。

しかし、彼のボクシングへの情熱は消えませんでした。弁護団の上訴が認められ、当初2年間の資格停止期間は6ヶ月に短縮。2016年3月にはUKADからも復帰の許可が下り、同年4月30日にライト級契約の復帰戦で勝利を収め、再びリングに戻ってきました。

復帰後は階級をフェザー級に上げ、2017年7月15日にはホセ・カイエターノにTKO勝ちし、IBFインターコンチネンタルフェザー級王座を獲得。そして2018年10月20日、トカ・カーン・クレイリーとのIBF世界フェザー級挑戦者決定戦を制し、当時のIBF世界王者ジョシュ・ワーリントンへの挑戦権を獲得しました。

待望の世界初挑戦は2019年6月15日。王者ワーリントンと対戦しましたが、僅差の判定で惜しくも敗れ、王座獲得はなりませんでした。しかし、ガラハドは再び挑戦者決定戦に勝利し、ワーリントンへの再挑戦の機会を窺います。その後、ワーリントンが王座を返上したことにより、IBFはランキング上位のガラハドとジェームズ・ディケンズによる王座決定戦を指令。2021年8月7日、ガラハドはこの決定戦で勝利を収め、ついにIBF世界フェザー級王座を獲得しました。

世界チャンピオンとなったガラハドですが、その栄光は長く続きませんでした。2021年11月13日に行われた初防衛戦で、元世界王者のキコ・マルチネスと対戦。経験豊富なマルチネスの前にまさかのTKO負けを喫し、わずか3ヶ月余りで王座を失う結果となりました。その後、ライト級での世界挑戦も試みましたが、タイトル獲得はなりませんでした。キッド・ガラハドのキャリアは、多くのタイトル獲得と世界王座獲得の成功、そして薬物問題や王座陥落といった波乱に満ちた軌跡を描いています。

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