キヅタ

キヅタ (Hedera rhombea)

キヅタは、ウコギ科キヅタ属に分類される常緑性のつる植物です。落葉性のツタ（ブドウ科）とは異なり、冬でも緑の葉を茂らせることから「フユヅタ（冬蔦）」とも呼ばれます。その丈夫さから、庭木としても利用されています。

名称

和名である「キヅタ」は、ブドウ科のツタと比較して木質が硬いことに由来します。別名の「フユヅタ」は、常緑性で冬にも葉が見られることにちなんでいます。

形態・生態

キヅタは、茎から多数の不定根（付着根）と呼ばれる細い根を出し、これを使って他の樹木や岩、石垣などに絡みつきながら成長します。ブドウ科のツタよりも茎が太く、より高い場所まで這い上がることが可能です。

葉は厚く革質で、長さ1.5～5cmの葉柄を持ち、茎に互い違いに生えます。若枝の葉は卵円形または菱形状卵形で、先端が3～5つに分かれますが、古い枝の葉は菱形状卵形または卵状披針形で、先端は尖り、切れ込みがありません。葉身は長さ3～7cm、幅2～5cmです。ツタと異なり、常緑であるため、一年を通して緑色の葉を観賞できます。

花期は秋（10～11月頃）で、茎の先に散状花序を形成し、小さな黄緑色の花を多数咲かせます。花は5弁花で、花弁の長さは3mmほどです。雄しべは5本あります。

果実は翌年の春（4月頃）に黒く熟し、直径6～7mmの球形をしています。

分布・生育地

キヅタは、東アジアの朝鮮半島、日本、中国南部、台湾に分布しています。日本では、北海道南部から本州、四国、九州、琉球列島まで広く見られます。低地の山野に自生し、耐寒性が高く、日陰でもよく育ちます。

近縁種

キヅタには、以下のような近縁種が存在します。

オカメヅタ (Hedera canariensis):
カナリーキヅタとも呼ばれ、日本でもグランドカバーや観賞用として庭や鉢に植えられています。乾燥に強く、生育が旺盛で、斑入りの品種が人気です。
セイヨウキヅタ (Hedera helix):
アイビーとも呼ばれ、ヨーロッパに分布するキヅタの仲間です。緑化植物として日本にも輸入されており、明るい緑色の葉が特徴で、しばしば5裂しています。日本では、壁よりも道路脇などの植え込みによく利用されます。

その他

キヅタは、その常緑性や丈夫さから、庭園や公園などで広く利用されています。また、アイビー・リーグの名称の由来になったという説もあります。これは、伝統ある校舎にツタが絡まっている様子から名付けられたというものです。

参考文献

辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社、2006年。
西田尚道監修、志村隆・平野勝男編『日本の樹木』5巻、学習研究社、2009年。
平野隆久監修、永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年。
佐竹義輔ほか編『日本の野生植物 木本 2』平凡社、1989年。
茂木透 写真『樹に咲く花 離弁花2』山と溪谷社、2000年。

関連項目

木の一覧
つる植物
地被植物
アイビー・リーグ

外部リンク

Germplasm Resources Information Network (英語)
National Center for Biotechnology Information (英語)
Encyclopedia of Life (英語)
岡山理科大学生物地球学部
福岡教育大学教育学部

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