キヌタプロダクション

キヌタプロダクション

キヌタプロダクションは、かつて存在した日本の映画製作会社です。1950年代初頭に、労働組合の資金を基に設立され、社会派の作品を製作しましたが、短期間で活動を終えました。ここでは、その設立から終焉までを詳しく解説します。

設立の背景

キヌタプロダクションは、1950年の第4次東宝争議の解決金の一部を基に設立されました。具体的には、東宝争議の解決金として日本映画演劇労働組合東宝支部に支払われた600万円のうち、200万円を資本金として設立されたとされています。この設立には、労働組合が映画製作に関与することで、労働者の視点や社会問題を反映した作品を制作するという意図がありました。

初期の活動

設立当初のプロデューサーは、日本映画演劇労働組合東宝支部委員長であり、日本映画演劇労働組合副中央委員長も務めた寺田昌業と、映画評論家として知られた柏倉昌美でした。彼らは、労働者の視点を取り入れた作品を制作することを目指しました。

1951年には、第一回作品として、作家の徳永直が書き下ろした原作を基に、亀井文夫が監督を務めた『母なれば女なれば』を制作しました。この作品は、女性の社会進出や労働問題をテーマにしたもので、当時の社会状況を反映した作品でした。1952年1月17日には、東映の配給で公開されました。

『女ひとり大地を行く』

1952年には、炭鉱労働者が１人33円ずつ出し合って300万円の資金を拠出し、日本炭鉱労働組合北海道地方本部の全面協力のもとで、『女ひとり大地を行く』の製作に着手しました。この作品は、炭鉱労働者の生活や労働環境を描いた社会派ドラマで、当時の労働運動とも深く関わっていました。

同年9月26日には、長期ロケを開始しましたが、製作費を軽減するために、スタッフやキャストは炭坑労働者が暮らす炭坑長屋で寝泊まりしました。しかし、製作費は当初の予算を大幅に上回り、最終的には2400万円に膨れ上がりました。

終焉

1953年2月20日、『女ひとり大地を行く』は北星映画の配給で公開されましたが、興行的には振るわず、キヌタプロダクションは経営難に陥りました。その後、1954年11月12日に伊藤武郎が中央映画株式会社の撮影所を設立した際に、スタッフが吸収されたことで、キヌタプロダクションはその活動を終えることになりました。

まとめ

キヌタプロダクションは、労働組合の資金を基に設立され、社会問題をテーマにした作品を制作しましたが、経営難により短期間で活動を終えました。しかし、その作品は、当時の社会状況や労働運動を反映した貴重な記録として、映画史にその名を刻んでいます。

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