キハダ

キハダマグロ：世界を泳ぐ大型マグロ

キハダマグロ（学名: Thunnus albacares）は、スズキ目サバ科マグロ属に分類される海水魚です。世界中の熱帯から亜熱帯の海に広く分布し、日本近海でも北海道以南で見られますが、特に太平洋側の伊豆諸島以南に多く生息しています。

大きさと特徴

成魚は全長2メートルを超え、体重200キログラムに達する大型の魚です。マグロ属の中ではミナミマグロやメバチマグロと並ぶ中型種に分類されますが、熱帯海域では全長3メートルに達する個体も報告されています。日本近海では、これよりも小型で、全長1.5メートル、体重70キログラム程度が一般的です。

キハダマグロの大きな特徴は、鮮やかな黄色の第二背びれと尻びれです。成長するにつれて鎌のように長く伸び、老成個体では糸状になることもあります。この特徴的なびれの色と形から、各地で様々な呼び名が付けられています。例えば、「キワダ」「マシビ」「イトシビ」など、地域によって異なる名前で呼ばれています。若魚は「キメジ」とも呼ばれ、体側には後方へ向かう白い斜めの縞模様があります。

生態と分布

キハダマグロは外洋の表層を群れで泳ぎ、カツオなど他の回遊魚と同様に季節的な南北の回遊を行います。好む水温は18～31℃と高く、マグロ属の中では最も高水温の表層に生息する種の一つです。流木やイルカなどに付着する習性も持ち、若魚はカツオやメバチマグロと混群を形成することもあります。産卵期は夏で、分離浮性卵を産みます。成長が早く、1年で全長50cm、2年で全長1mに達し成熟すると言われています。寿命は8年程度と推定されています。餌は魚類、頭足類、甲殻類などです。

漁業と利用

キハダマグロは、延縄、曳縄、巻き網などの遠洋漁業で漁獲されています。南西諸島や伊豆諸島などでは、磯釣りや船釣りでも漁獲されます。世界的なマグロ漁獲量のうち、キハダマグロが約100万～140万トンを占め、最も漁獲量の多いマグロです。日本でもメバチマグロに次ぐ流通量を誇り、台湾や韓国からも輸入されています。

身は赤身で脂肪が少なく、締まっています。色は薄紅色でクロ[[マグロ]]よりも淡い色をしています。世界的には、ビンナガマグロと共にツナ缶の主要な材料として利用され、ステーキなどにも加工されます。日本では、脂肪が少ないことから西日本で特に珍重され、刺身、焼き魚、唐揚げなど様々な料理に使われます。大分県の郷土料理「ひゅうが丼」や沖縄料理の天ぷらにも用いられています。ハワイでは「アヒ」と呼ばれ、ポケの材料としても有名です。

保全状況と混獲問題

キハダマグロは乱獲により個体数が減少しており、IUCNレッドリストでは軽度懸念(LC)に分類されています。しかし、成長が早いことから、他のマグロ類よりは深刻な状況ではないと評価されています。

かつては、キハダマグロの漁獲に伴うマグロまき網漁におけるイルカの混獲が大きな問題でした。アメリカ合衆国では海洋哺乳類保護法(MMPA)が制定され、イルカ混獲を削減するための対策が講じられました。その後、中南米の漁業者も人工集魚装置(FADs)を使用した漁法に転換しましたが、今度はFADsにキハダマグロや他の魚種の幼魚が混獲される問題が懸念されています。

まとめ

キハダマグロは、世界的な漁業資源として重要な役割を果たしている一方で、乱獲や混獲の問題を抱えています。持続可能な漁業管理と資源保全の取り組みが、この重要なマグロ資源の未来を守るために不可欠です。

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