ビンナガ

ビンナガ（鬢長, 学名: Thunnus alalunga）

ビンナガは、スズキ目のサバ科に属する魚で、全世界の熱帯および温帯海域に広く分布しています。小型のマグロの一種であり、一般的には缶詰などの加工品として重要な食用魚とされています。

この魚は、「ビンナガマグロ」や「ビンチョウマグロ」と呼ばれることもあります。さらに、地方にはトンボマグロやシビマグロといった異称もあり、宮城や三重など地域ごとに様々な呼び名があります。特にアメリカの日本人コミュニティでは、英語名の「Albacore tuna」から「アバコ」と親しまれており、寿司などの料理にも利用されています。

特徴

成魚のビンナガは、全長140 cm、体重約60 kgに達することがありますが、マグロの中では小型に分類されます。漁獲される多くのビンナガはおおよそ50-100 cmの大きさで、カツオと似た範囲です。特徴として、胸鰭が第二背鰭を超えるほど長く、個体によっては背中側の第二小離鰭に達することもあります。この長い胸鰭は、正面から見ると非常に目立ち、その形状からもみあげを連想させます。

ビンナガは、熱帯や温帯の海域に分布し、特にキハダやメバチがいない地中海にも存在します。日本では、主に北海道南部以南の海域で見られますが、日本海での出現は少ないです。北太平洋においては、「東西大回遊」を行い、その移動が標識放流によって証明されています。

この魚は、表層から中層に生息し、水温は16-20℃を好みます。キハダやメバチよりは低い水温を好む一方で、クロ[[マグロ]]やミナミマグロよりは高い水温を好みます。また、大型個体は中層で14-25℃の範囲を選好します。

利用法

ビンナガは、延縄や曳縄（トローリング）、一本釣りなどの方法で漁獲されており、その漁獲量は1960年代から年間約20万トン前後で安定しています。身は赤身ですが、色は白に近いピンク色をしていて、非常に柔らかいのが特徴です。フライや唐揚げ、ソテーなど多様な調理法で楽しむことができ、鰹節に似た「鮪節」に加工されることもあります。

世界中で、ビンナガは缶詰の材料として非常に重要で、特にキハダとともに広く使用されています。その肉質は鶏肉に似た食感から「Chicken of the Sea」「シーチキン」と名付けられ、欧米でも多く消費されています。また、ペットフードの原料としても需要が高いです。

マグロの仲間の中ではうま味が弱く、生食には適していない場合が多いですが、寒冷地で漁獲されたビンナガの脂が乗っている個体は特に美味しく、回転寿司などで「ビントロ」として用いられています。

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストには、情報不足として分類されている一方で、北大西洋のビンナガは「脆弱」、南大西洋のビンナガ個体群は「絶滅危惧IA類」に指定されています。特に南大西洋に生息する個体群は、絶滅の危機にあるため、その保護が求められています。

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