キバラタイヨウチョウ

キバラタイヨウチョウ：東南アジアからオーストラリアに広がる太陽の宝石

キバラタイヨウチョウ (学名: Cinnyris jugularis) は、タイヨウチョウ科に属する全長約11.5cmの小型の鳥です。英名ではOlive-backed Sunbird、Yellow-bellied Sunbird、Yellow-breasted Sunbirdなどと呼ばれ、東南アジアからオーストラリア北部までの広い範囲に分布しています。地域によって様々な呼び名があり、フィリピンでは「Tamsi」、マレーシアでは「Kelicap Pantai」などと呼ばれています。

広大な生息域

キバラタイヨウチョウの生息域は非常に広大で、インドのアンダマン諸島やニコバル諸島から、インドシナ半島、マレー半島、中国南部、海南島、フィリピン、スンダ列島、ニューギニア、ビスマルク諸島、ソロモン諸島、そしてオーストラリア北東部まで及びます。

多様な色彩と模様

キバラタイヨウチョウの羽色は、亜種によって多様なバリエーションが見られます。多くの亜種では、雌雄共に下面は鮮やかな黄色、背は鈍い褐色をしています。しかし、雄の成鳥は、額、喉、上胸が濃色で金属光沢のある暗青色になるのが特徴です。フィリピンの亜種の中には、胸に橙色の横帯を持つものもいます。また、ワラセアやニューギニア島北部の一部の亜種は、下面が黒みを帯び、中国南部やベトナムに分布する亜種は灰白色を帯びるなど、地域差が顕著です。

花蜜と昆虫を主食とする採餌行動

キバラタイヨウチョウは、主に花蜜を餌としています。タイヨウチョウ類は、雛への給餌時には昆虫も採りますが、花蜜食が中心です。短い翼を高速で羽ばたかせ、空中でホバリングしながら花蜜を吸う様子は、まさに太陽の宝石の名にふさわしいと言えるでしょう。普段は枝にとまり、採餌の際に飛び立ちます。

多様な環境への適応

キバラタイヨウチョウは、開けた低地から標高1700m程度の山地まで、様々な環境に適応して生息しています。本来の生息地は多雨林の林縁、水辺の植物地帯、沿岸の低木地、ユーカリ林、マングローブ林などですが、人間社会にもうまく適応しており、農耕地、果樹園、公園、そして人口密集地域にも見られます。人間の住居に巣を作ることもあるほど、人間と共存している鳥と言えるでしょう。

ユニークな巣と繁殖行動

キバラタイヨウチョウの繁殖期は、北半球では4月から8月、南半球のオーストラリアでは8月から3月です。主に雌が、若木やつる植物、低い枝先、あるいは家屋やベランダなどに巣を作ります。巣は、樹皮、草、葉、クモの巣などの破片を使って作られ、入口に張り出した縁のあるフラスコ形で、下端部に素材を垂らした吊り巣というユニークな形をしています。巣の中には、種子の綿毛や羽毛を敷き詰めます。

雌は1～3個（オーストラリアでは平均1.95個）の卵を産み、13～15日間抱卵します。抱卵中は、日中に少しだけ巣を離れることもあります。雛が孵化すると、雌雄ともに協力して育雛を行い、約2～3週間で巣立ちます。オーストラリアでは、フトハシテリカッコウによる托卵が確認されています。

多くの亜種

キバラタイヨウチョウは、実に21もの亜種に分類されています。それぞれの亜種は、分布域によって色彩や模様に微妙な違いがあり、その多様性は、この鳥の適応力の高さを示しています。

キバラタイヨウチョウは、その美しい色彩、多様な環境への適応力、そしてユニークな繁殖行動など、多くの魅力を持つ鳥です。今後の研究によって、さらに多くのことが明らかになることが期待されます。

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