キャスタミアの雨

ゲーム・オブ・スローンズ シーズン3 第9話『キャスタミアの雨』

概要

『キャスタミアの雨』は、HBO制作のファンタジー・ドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン3「戦乱の嵐 -前篇-」の第9話です。このエピソードは、デイヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスが原作『剣嵐の大地』を基に脚本を執筆し、デヴィッド・ナッターが監督を務めました。

タイトルは、七王国で広く知られる歌の題名であり、かつてラニスター家に反逆したキャスタミアのレイン家が、タイウィン・ラニスターによって冷酷に鎮圧された事件を歌っています。この歌は、タイウィンの恐ろしさを象徴的に表現しており、物語全体を通して重要な意味を持ちます。また、「レイン」は「雨（rain）」と掛詞になっています。

このエピソードの中心となるのは、原作でも特に有名な「釁られた婚儀（血染めの結婚式）」です。エドミュア・タリーとロズリン・フレイの結婚式を舞台に、ルース・ボルトンとウォルダー・フレイが裏切り、ロブ・スターク、キャトリン・スターク、そしてスターク家とタリー家の兵士たちが惨殺されます。この虐殺から逃れたのは、エドミュア・タリーとブリンデン・タリー、そしてこの悲劇を目撃したハウンドとアリアです。一方、ジョン・スノウはイグリットたちとの関係を断ち、ブランはリコンと別行動を開始します。さらに、デナーリスはユンカイを制圧するという出来事も描かれています。

このエピソードの脚本を担当したデイヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスは、2013年のプライムタイム・エミー賞脚本賞ドラマ部門にノミネートされました。

あらすじ

北部

壁の北では、サムウェル・ターリーとジリが南への旅を続けています。サムは、壁沿いの廃墟となった城、夜の砦の出入り口を使って壁を越えようと考えています。

壁の南では、ブラン一行が廃墟となった粉挽き小屋で休息を取っています。ジョン・スノウと野人たちは、馬飼いの老人を襲撃し、馬と金銭を奪いますが、老人は逃げ出します。粉挽き小屋では、ブランとジョジェン・リードが壁を越える方法について話し合っています。そこへ、ミーラ・リードは馬飼いが通りかかったことに気づきます。馬飼いが野人たちに捕らえられた後、ホーダーが雷に怯えて叫び出し、野人たちに発見されそうになります。ブランは狼潜りの能力を使ってホーダーの意識を鎮めます。

粉挽き小屋の外では、トアマンドが馬飼いを殺そうとしますが、オレルがジョンの忠誠心を試すため、ジョンに殺させようと提案します。しかし、ジョンは無実の人間を殺すことができず、代わりにイグリットが矢で射殺します。ジョンの本心を知ったトアマンドは、ジョンを殺すように命じます。イグリットがジョンを庇おうとするも、ジョンは彼女を押し退け、オレルとの戦闘を開始します。ブランは自分のダイアウルフであるサマーの意識に入り込み、ジョンを助けようとします。サマーとゴーストが他の野人たちを襲っている隙に、ジョンはオレルを殺し、馬を盗んでイグリットを置き去りにし、壁へと逃げ出します。夜、ブランはオシャにリコンを連れて、スターク家の旗主であるアンバー家の本拠地、最後の炉端城へ行くように伝え、自分たちは三つ目の鴉を探して壁の向こうへ向かうことを告げます。

狭い海の向こう側

ユンカイ攻撃作戦会議で、ダーリオ・ナハーリスはデナーリスに、ユンカイの裏門から侵入して表門を開ければ軍を都市に入れることができると提案します。ジョラー・モーモントはダーリオの計画を疑いますが、デナーリスはグレイ・ワームの意見を聞いて採用します。夜になり、ダーリオ、ジョラー、そしてグレイ・ワームは裏門に到着します。ダーリオは先行し、都市に仕える次子隊の司令官を装い、都市への入城を許され、ジョラーとグレイ・ワームに続くよう合図します。しかし、3人はユンカイの奴隷兵に待ち伏せされ、多勢に無勢となります。3人はデナーリスの元に戻り、奴隷を味方に引き入れてユンカイを占拠したことを報告します。

双子城

キャンプ地で、キャトリンは息子のロブとウォルダー・フレイとの同盟、ラニスター家の本拠地であるキャスタリーロックへの攻撃について話し合っています。スターク軍はフレイ家の本拠地である双子城に到着し、他の領主の家の屋根の下での安全を保証する「客の権利」の象徴であるパンと塩を与えられます。ロブはウォルダー・フレイとその娘たちに謝罪します。ウォルダーは謝罪を受け入れますが、ロブが婚約を破った理由であるタリサを近くで見たいと言います。一方、アリアはサンダー・クレゲインに捕らえられたまま、母と兄に会うために双子城へ向かっています。サンダーは双子城に食料を運ぶ荷車を盗み、商人を殺そうとしますが、アリアに止められます。

夜になり、ウォルダーは娘ロズリンを花婿のエドミュア・タリーの元へ送り、エドミュアは花嫁の美しさに喜びます。二人の結婚式が執り行われ、祝宴が始まります。宴もたけなわの頃、ウォルダーは床入りの儀式を始めさせ、新郎新婦は部屋へと運ばれます。新郎新婦が退席すると、ローサー・フレイが宴会場の扉を閉め、フレイ家の楽団がラニスター家の警告の歌である「キャスタミアの雨」を演奏し始め、キャトリンは疑念を抱きます。荷車に食料を積んで運んで来たふりをして、サンダーとアリアは双子城に到着しますが、門から入ることを禁じられます。アリアは姿を消します。

キャトリンはルース・ボルトンが鎖帷子を着込んでいることに気づき、裏切りを確信します。ウォルダーが合図を出すと、フレイ家の者たちがスターク家の人々を襲撃し、キャトリンはロブに警告しようとします。しかし、ロブが行動を起こす前に、ローサーが妊娠中のタリサの腹部を何度も刺し殺します。ロブが剣を抜こうとした時、石弓に射ぬかれます。アリアは門の中に忍び込み、フレイ家の兵士たちがスターク家の兵士たちとロブのダイアウルフであるグレイウィンドを殺害するのを目撃します。アリアはサンダーに殴り倒され、気を失って城の外へ運び出され、救われます。キャトリンは石弓に射抜かれ、重傷を負いながらも、ウォルダーの若い妻を人質に取り、ロブの助命を訴えます。ウォルダーはそれを拒否し、ルース・ボルトンはロブの心臓を突き刺し、「ラニスター家の挨拶」を伝えます。キャトリンは泣き叫び、復讐のためにウォルダーの妻を殺害しますが、ウォルダーの息子であるブラック・ウォルダー・リヴァーズによって喉を掻き切られ、命を落とします。

製作

脚本

このエピソードの脚本は、原作の第3部「剣嵐の大地」の第41章から43章、そして50章から53章に基づいて、デイヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスによって書かれました。このエピソードは、シリーズにおける最も重要な転換点の一つである「釁られた婚儀」を描いています。このシーンを原作で読んだ際、ベニオフとワイスは非常に大きな衝撃を受け、テレビドラマ化の権利を取得することを決意したと言われています。

ジョージ・R・R・マーティンは、物語の構想を練っている初期段階で「釁られた婚儀」のアイデアを思いつき、それを三部作の第一部のクライマックスとして描こうと考えました。実際には、七部作の第三部のクライマックスとして描かれることになります。マーティンは、スコットランドの歴史的な出来事から着想を得ています。その一つは、スコットランド王ジェームズ2世が有力なダグラス氏族をエジンバラ城に招いた「ブラック・ディナー」として知られる出来事です。この事件では、黒い雄牛の頭が晩餐の最後に死の象徴として登場し、太鼓の音が鳴り続ける中、ダグラス氏族は虐殺されました。もう一つのインスピレーションとなったのは、キャンベル氏族が客として招いたマクドナルド氏族38人を殺害した、グレンコーの虐殺です。

マーティンは、「釁られた婚儀」のシーンを執筆するのが最も困難だったと語っています。彼は常にキャラクターの視点から物語を書き、彼らと感情を共有しようと試みるため、虐殺で命を落とす端役のキャラクターたちにさえ強い共感を覚えました。そのあまりの辛さから、この章を後回しにして他の章を完成させ、最終的に自分を奮い立たせてこの章を書き上げたそうです。2012年のコミックコンで、マーティンは放送時にはテレビのない国に行くつもりだと冗談を言っていました。

また、マーティンは、読者に「子が父の死の復讐をする物語」という誤った期待を抱かせないために、ロブを殺害したと説明しています。原作では死なないジェイン・ウェスタリングに対応するタリサを殺害したのは、ロブの子供が父親の復讐をすることがないようにするためだと述べています。

キャスト

人気バンド『コールドプレイ』のドラマー兼バックボーカリストであるウィル・チャンピオンが、結婚式の楽団員としてカメオ出演しています。

評価

視聴者数

初回放送では、522万人が視聴し、18歳から49歳の層で2.8％の視聴率を獲得しました。同夜の再放送では108万人が視聴し、合計で630万人の視聴者数を記録しました。

受賞

このエピソードは、2013年のプライムタイム・エミー賞の脚本賞ドラマ部門と編集賞ドラマシリーズ部門にノミネートされました。また、2014年のヒューゴー賞映像部門の短編部門にもノミネートされています。

参照

外部リンク

スター・チャンネル 『ゲーム・オブ・スローンズ』ページ
ワーナー・ブラザース DVD&Blu-ray 『ゲーム・オブ・スローンズ』ページ
* Official U.S. website HBO

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